これ、私は好きです。
ネットなどで見受けられる評の中には「暇つぶし程度の価値」といったものもありますが・・・。
たしかに平易な文体でさらっと読める小説ではありますが、決してそれだけではないと思います。
どこまでも常識的な人生のレールから逸脱しないことをモットーとして生きてきた幸せな男の前に現れた、かつての同級生。このヤンデレヒロイン?克江の描写が奮っていて存在感があります。冴えなくて人にどんどん押しのけられていそうな、道の真ん中も歩けなさそうな気弱な女の子の抱えていた狂気、抑圧されているからこそ生まれた執念は、常軌を逸しているのに変なリアリティがあります。
その後の経緯はともかく、みんなから侮蔑されてポツーンとしている少女時代の克江の姿は、本を閉じた後で「クラスにこんな感じの子がいたなぁ・・・」と思わせ、特に少女時代が灰色だった女性には、痛ましくも懐かしく思えるのではないでしょうか。
また二人の故郷の埼玉の田舎の学校の描写も、郷愁にあふれていて印象的です。