新訳をつけるのはツライ仕事かもしれません。それはある意味で過去の完成品に反抗する行為に往々にしてなりうるからです。しかし、オリジナルは古びず、日本語だけが古びる。こういった事情が、こうした若い翻訳家による新訳を必要とするのだと思います。いろいろな人のツルゲーネフの翻訳を読みましたが、それぞれに個性のある味のあるいい翻訳がありました。米川訳、神西訳、そしてバーリン訳、ガーネット訳などいろいろです。この新しい沼野訳も訳者の個性のあらわれた繊細で少し感傷的ともいえるやさしい気品のある翻訳に仕上がっています。
ちいさなツルゲーネフの短編。そこに刻み込まれた愛と憎しみ。青春と挫折。老いと諦観。女の愛の真実とは?静かな筆致で熱い情熱を見事に描ききった十九世紀ロシア作家の珠玉の一品です。