あの「三億円事件」の秘密の扉が、今静かに開かれる。
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8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
思春期を終えても、モラトリアムでいたい大人への話,
By ryo minami (北海道札幌市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 初恋 (新潮文庫) (文庫)
府中3億円強奪事件、人ひとり傷つけずに数分で3億の金を奪った、時効になった今も、ある種の「昭和ロマン」の様な事件がモチーフの作品です。 著者の「私は「府中三億円強奪事件の実行犯だと思う」という衝撃的なまえがきに 始まる物語ですが、謎解きや犯人が事件の成功を歓喜する作品ではなく 思春期を過ぎた大人なら、誰もがどこかしこに共感してしまうような一人の少女の 純粋な初恋を描いた作品です。 まだ「思春期」という時間の中にいるからこその、無謀さや、激情や、その先に見える 純粋さがリアルに描かれていて、読み終えた後の甘酸っぱい懐かしさがとても心に残る話でした。 この話は「三億円事件の真相」ではなく、「一人の少女の淡く忘れえぬ初恋の物語」 として、読むのがお勧めです。 事件の実行犯なのかどうなのか、この真実は読み終えた後も私にはわかりません。 こんな真相だったらいいな、とは思いますが。 賛否両論あると思いますが、「事件の真相」がこの物語でなかったとしても、 それすら、こだわることではないのかなと、読み終えた今は思っています。 思春期真っただ中の年齢の方、60年代の学生運動に身を投じた方、 そしてその間の世代の方、それぞれに感じるものがたくさんある作品です。 私は10代のころにこのお話に出会っていたかったなぁと、思います。 ※初のレビューですので、不出来なレビューで申し訳ありません。
44 人中、38人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
初恋だからこそのリアル,
By satsukin (千葉県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 初恋 (単行本)
“私は「府中三億円強奪事件」の実行犯だと思う・・・”というギョッとする帯の見だし。それに相反するようなタイトルと淡く柔らかい表紙はなんだろう、と気軽に手にしたらつい読み深けっていた。過去に出版した手記に加筆・修正した再発本らしいのだが、手記というよりも私小説のような文章の美しさ。 1968年、学生運動も過激に盛り上がる時代。新宿のジャズ喫茶では、けだるく夢みる若者達。三億円事件は中上健次の周りで起きたと噂があったらしいが、健次の長女・中上紀も帯にコメントを寄稿しており、まことしやかなことかもしれない。 淡々と書くことで、幼少期から寂しさを耐えて過ごし思春期となった女子高生みすずの、ゆらゆらと蒼く静かに燃える心情が際立つ。時折出てくる短歌が染みる。 多感な時期の、恋に直情的な感覚を憶えている人は共感できるであろう。 とても切なく心に響いてきました。 無粋ですが動機に繋がる滑らかさから、中原みすずは実行犯だったと思いました。思っていたい。時効になったのも理解できる。幾つの時にこれを振り返り、書いたのだろう。瑞々しい感性と、誠実な文章に触れられて私は幸せです。 読み終えて改めて表紙の抽象画を眺めた。繊細さと複雑さと情熱を見事に描かれていた。 装画を担当したのが浅野忠信と知り意外だったが、その感受性は俳優として才能を発揮しているだけでなく画家としてもイケてます。
40 人中、31人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
初恋が生んだ三億円事件,
キッズレビュー
レビュー対象商品: 初恋 (単行本)
私は「読書家」ではありませんが、読まないこともありません。いつも鞄の中には何か一冊入れています。 決して難しくなく、興味がある分野ばかり読むので、偏りがち!といえば“偏りがち”ではあるんですが・・・。 でも、自分の好きな世界を持つ本に出逢えると、それだけで嬉しいものです。 そんな中で、中原みすずの『初恋』も特別な一冊になりました。 これは、初版で買ったので、読んでから3年半くらい経つかなぁ? 帯にはこんな風に書かれていました。 『三億円事件の秘密の扉がいま静かに開かれる』 そうです!この小説は、あの「府中三億円事件」がモチーフになっているのですね。私が生まれる前のことだから、30年以上も前の話。 それも、人ひとり傷つけず、わずか数分の間に、何者かによって、強盗される・・・。 結局、犯人は捕まらず、時効をむかえたわけだけど、「初恋」を読むと、本当にこの主人公(女子高生)が実行犯なのか?・と、思ってしまうほど入り込んでしまう、切ないストーリーなのであります。ジャズが聴こえてくるような、時代背景も素晴らしい。 いつの間にか、主人公になりきって読んでるんですよね。 でも決して、手記という感じではなく、静か〜な時間が流れる“私小説”のような美しい文章なんです。 なのに、実話のよう・・・。だってタイトルに「初恋」なんてつけて決して府中三億円をウリにしてないでしょ! それも凄いことなんですよね。ホントの話だからじゃないのかなあ。 読んでから、随分時間が経ちますが、私の中では、とても心に残る一冊になりました。
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