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一般の文法書の場合、冠詞の項は、簡単な原則と、多数の用例、例外の羅列です。「慣用」なので一つ一つ覚えるしかない、と書いてあったりして、途方にくれてしまいます。本書は、定冠詞からはじまって、「限定」ということの意味、機能を深く追求していきます。「慣用」といわれるような表現も、実は理屈で説明できるのだということがわかると、目からウロコが落ちる思いです。こんな基本的なことを知らずに読んだり書いたりしていたのかと思うと、恐ろしくもなります。
意外にも、フランス語にとって冠詞というのは、日本語にとっての助詞のあり方と似た性格を持っているようです。「てにをは」の用法は日本人には自明ですが、口で説明するとなると、当たり前すぎて難しい。そういうことが冠詞にもいえるようです。
この本を読むと冠詞の用法が「マスター」できるかというと、それほど冠詞は甘くありません。いままで以上に迷宮に入り込む可能性があります。著者にすら、すべてが解明されているわけではないらしいのです。とはいえ、冠詞に対する感受性は確実に養われます。冠詞を単なる暗記の対象とするのでなく、なぜ定冠詞なのか、なぜ無冠詞なのかといったことを自分で考えるようになります。小さな冠詞に対する目を養うことは、フランス語の読み方まで変えてしまうほど、大きな違いを生む可能性を秘めていることに気付かされます。そして何よりも、自信を持って使えるようになることは、嬉しいことです。
不定冠詞を使うのか、定冠詞を使うのかという問題。あるいは、単数形を使うのか複数形を使うのかという問題もありますが、その上、無冠詞という選択も入れ、冠詞の使い方をめぐる様々なパターンや実例が明るみにされています。
明らかに中上級者向けの書物ですが、これを使って冠詞をマスターしようというのは少し無理があるでしょう。冠詞をマスターさせるのが目的なら、例題と演習を組み合わせ、それに対して丁寧な解説を加えるという構成をとるべきでしょうが、この本はエッセー的な展開になっており、冠詞に対して加えられた考察を楽しむ読み物として捉える方がいいと思います。
とは言うものの、フランス語を極めたいと願う学習者はぜひ手に入れておきたい書籍であることには変わりはありません。
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