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10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
作者はモーツァルトに、音楽に、小説に恋をしている!,
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レビュー対象商品: 初夜 (新潮クレスト・ブックス) (単行本)
1962年のイギリスで、結婚式を終えたエドワードとフローレンスが初めての一夜を迎える。その夜の失態が取り返しのつかない状況に繋がり、ふたりは別れてしまう。というだけの話が、なぜこんなに読ませるのか!?フローレンスの知らない、エドワードの家庭の胸が詰まるような悲しい、悲しいけれどあたたかい環境、エドワードの知らない、フローレンスの弦楽四重奏団への強い思い。そしてそれぞれの抱えてきた性的なコンプレックス。……それらを知るのは、神ならぬ作者、そして読者の絶対的な特権だからなのだろう。 エドワードの目に映るフローレンスの姿が忘れ難い。夏にフローレンスの邸宅で過ごした幸せな時間の回想で、アリスバンド(カチューシャ )をしてヴァイオリンの練習をするフローレンスの描写は、ナボコフが惚れ込んだフロベールの、ボヴァリー夫人の描写を思わせる。(奇しくもフローレンスの家の図書室にはナボコフの新刊があるし)フローレンスがふいにエドワードを訪ねてくる時の、白いシャツにタンポポを挿した姿と、その時のふたりのときめきは、永遠にエドワードの記憶に刻まれる。そして、この小説の読者の記憶にも!小説の末尾で初老のエドワードに回想されるこの場面が、甘く苦く胸を締めつけ、自分のことのように、ふたりの運命に思いを馳せてしまう。 のちに華々しくデビューしたフローレンスの四重奏団は、「タイムズ」の音楽批評家に「演奏の鋭さ、思索的な強烈さ、洞察力」を称えられ、モーツァルトの弦楽五重奏第五番ニ長調の演奏について「モーツァルトの後期のスタイルの典型である、多種多彩な和声や強弱法の効果や、ゆたかな対位法的旋律を堂々たるゆとりをもって自在にあやつった」と絶賛される。この批評は、「モーツァルトに、音楽に、人生に恋をしている」フローレンスの演奏のみならず、この小説の資質をも言い当てている。この初演の9Cの席のエピソードも泣ける。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
切なさに胸が締め付けられる…,
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レビュー対象商品: 初夜 (新潮クレスト・ブックス) (単行本)
人生の取り返しのつかなさに、残酷さに、せつなさに、読み終わってしばらく動けないほど胸をしめつけられました。 非常に美しい訳文で、なめるように味わいたくなる文章です。 当時のイギリスの生活をうかがい知ることができるのも非常に興味深かったです。
11 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
真っ白く覆われていく……,
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レビュー対象商品: 初夜 (新潮クレスト・ブックス) (単行本)
二人にあるのは愛情だけで、悪意は全くない。ともに被害者であり、加害者。その瞬間に向けた数時間を緻密に描きあげたサスペンス。冒頭から緊張感が漂い、ページをめくるだけで二人の不安と興奮が伝わってくる。 悲劇の後に、出会ったばかりの、恋に落ちた幸せな頃の様子を持ってくる凶悪さ。 要するに、やりたくてやりたくてしょうがない新郎と、それが嫌で嫌で堪らない新婦のお話。 男なんで、どちらかというと新郎の方に肩入れしちゃうんだけど、描写が細かいから、新婦の心情もよくわかるんだよね。 後になって考えれば、彼女はけっして異質ではなく、時間と共に問題は解決された(かもしれない)はずなのだが、緻密な筆致の間に、それを待つ余裕はない。 初夜の数時間に比べ、後の人生の描写に紙幅は取られていない。それにより、彼の全感覚の極がその夜にあったことがわかり、残りの歳月は何となく過ぎ去ってしまう。 記憶に残るであろう、ぶっかけ(あら、はしたない)小説でもある。
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