素晴らしい。懐かしい。愉しい一冊の紀行文です。
私のように30年以上前に「初めての山」や「愉しかりし山」を読んだ人間にはたまりません。
本多氏と父上の関係を思い出し、懐かしい曽我君の名前が出てきたり、うきうきしてきます。
一時ノルマのように年間12回山に登ることを心がけていた頃の紀行文よりも、何かゆったりとした文章です。
氏の素晴らしい絵も表紙カバーを含めて10点掲載されています。
本多氏が60年前の記憶と対比させながら書き進む文と、「初めての山」や「愉しかりし山」を読んだ時の記憶と、私自身の山行の記憶の三つが完全に重なり合い、いつもなら通勤電車で分割して読むのに、一気に読んでしまいました。
特に第一部は今までより一歩踏み出した作品だと思います。
そのなかでも「北岳」は油断して読んでいたので、圧倒されました。
この「北岳」に掲載された5枚の写真は、いつものサングラスに帽子姿の本多氏ではなく、風景でもなく、同じひとりの人を写した写真です。
拍手喝采。是非お読み下さい。