旗や紋章といったシンボルの魅力は、それらのデザインに込められた歴史、思想、民族性などが垣間見えるところだと思います。そんな旗章学の魅力が、文字通り古今東西の膨大な資料とともに紹介されています。
この図鑑は、昨年の「世界海事旗章図鑑」につづいて刊行された旗関連書籍で、「旗から見える世界史500年」の副題のとおり、大航海時代から第二次世界大戦後までに列強と呼ばれた国々によって植民地・海外領土で使われた旗の意匠が網羅されています。これら列強の植民地支配の歴史を概観できる内容になっていますが、その編集形式は、単純に時系列の年表形式でもなく、地域ごとにまとめたものでもなく、宗主国単位でまとめられている大変ユニークなものです。
各章の扉には、宗主国の植民地の歴史について説明があり、基本的な歴史の流れを知った上で旗が見られるように配慮されています。各章では、地域ごとに歴史の概要と過去の旗が紹介され、それぞれの旗についての解説が添えられています。植民地・領土の旗のデザインの変遷を眺めていると、宗主国と植民地とのかけひきやイデオロギー、民族性などが想像できます。
なかでも圧巻なのは、第4章の英国植民地海外領土旧旗章で紹介されている旧旗の数々。カントンのユニオンジャックから想像できる宗主国英国のシステマティックな領土管理、そして各旗のバッジに表された各地域の個性。これらは、まとめて紹介されているこの図鑑だからこそ見えてきます。図版の多さからそれぞれの旗が小さいのがやや難点ではありますが(バッジのいくつかは88ページに載せられた1914年のバッジ集で確認できます)、英国の植民地と海外領土の旗章とその地理的・歴史的背景にフォーカスした書物もあればなぁ読みたいなぁ・・・などと欲が出てしまいました。