司法試験の刑法の理解のために、本書を用いる際の特徴は以下の通りです。
メリット
・判例・学説の全体像がクリアになる。ここまで整理された本は他にはなかなか存在しないと思います!
・ところどころ、問題が掲げられている。
判例・学説の紹介は大抵その問題解決という方式をとるので、なぜそのような学説が出てきたのか、思考訓練にもなる。
・特に0章、1章は原則であり、各論全体の理解のために参考になると思われる。
デメリット
・非常に厚いため通読向きではない。気になるテーマをかいつまんで読んだほうが良いくらい分量がある。
・使い方に注意。良くも悪くも初心者向きではない、中級者向け。
刑法全体を一回しした後に、理解をさらに深めるために用いるべきと思われる。
・内容について
本書は、通常の教科書が、その教授の自説のみを述べ、他の説との比較などはあまりしないのに対して(最近は判例を最初に紹介してくださる本も増えましたが)個々の論点に対して、どのような説が存在しているのか、また、それぞれの論拠が紹介されており、反対説を通じて自説の深い理解を得ることができると思います。
・著者について
著者の大塚先生は神戸大学の教授もされており、文章も非常にわかりやすく、大変信頼のおけるものだと思います。
・刑法上の立場について
刑法は結果無価値・行為無価値の対立がもともと激しいものではありますが、どちらの立場の人が読まれても、それほど違和感はないと思われます(刑法各論においては、総論ほどの対立がないというのも理由でしょうが)。
第3版での新版からの変更点について 章立てとしては以下の変更があります。
・各論の考え方の原則 一つの章にまとめられました。
・横領罪 新版では、「二重売買と横領罪」「預金による占有」という2章が置かれていた。
第3版では「横領罪の基本構造」「横領罪の諸問題」「誤振込と財産犯」と3章立てとされました。
近時注目されているの誤振込の問題が大きく扱われているのが特徴的だと思います。
・背任罪 新版では、「二重抵当と背任罪」とされていた。
「背任罪の基本構造」「背任罪の諸問題」として章が2章に拡大されています。
・181条(強姦致傷罪) 新たに章が設けられました。
・掲載判例について
新版では、最判平成16・12・10までだったのが、第3版では、最決平成21・3・26まで捕捉されました。
もちろん、百選、重判に掲載されている判例が多く含まれています。
以上のように、じっくり取り組むものと、使い方にさえ気をつければ、非常に有益な本だと思われます。
星は4つとしますが、4の中でも高い方に分類したいところです。