ケネス・ブラナーがこれほど魅力的な俳優だったとは、知りませんでした。疲れ切った弱々しい悩めるオヤジを好演しています。シェイクスピア劇を演じたイギリス男優というと仰々しいイメージがありましたので、意外でした。
原作はスウェーデンの小説だそうですが、未読のため、このドラマがどこまで原作に忠実なのかはわかりませんが、スウェーデンを舞台にイギリス人が演じていても、ほとんど違和感がありません。もちろん私が、イギリスとスウェーデンの細かい見分けがつかない日本人だからでもありますが、基本的に、人物と背景とがしっかりと描かれているからです。
90年代前半に作られたヘレン・ミレンの「第一容疑者」シリーズもそうでしたが、イギリスの刑事ドラマは、どこまでも等身大でリアルです。中流以下の疲れ切った登場人物たち。社会の断面を切り取ったリアルな内容と、丁寧な画面作り。ドラマを作る側も視聴者も、生活と社会を重視する大人だからこそ成り立つ、ドラマ作りなのでしょう。
翻って、日本の刑事ドラマときたら、アメリカ映画の安手の猿真似なのか、高学歴以外には何の取柄も無い木っ端役人をやたらにカッコよく見せたがるジャリタレ学芸会と、あとはワンパターンの水戸黄門の現代版ばかりです。
今の日本社会では、都市化が行き過ぎて生活に実感が持てないことが、ドラマの貧弱化の背景にあるのではないですかね。疲れ切った登場人物の私生活を見せられるよりは、学歴とか社会的地位でシンボル化した方が、作る側も手っ取り早いし、見る側もわかりやすいんでしょう。でも、お手軽なジャンクフードばかり食わされていると、本物の料理の味が分からなくなる、とよく云いますからね。