民事と刑事の違いを切り口として、法律制度や裁判を容易に伝えようという啓蒙的な取り組みと思う。
ノリの軽い柔らかな法律書を目指しており、それはそれでよいと思うが、独自解釈で生じた混乱を解決しないで放置しており、読後は、むしろよく分からなくなるという印象。
また、よく読んでみると、実は、本書のポイントは違うところにあるような気がする。
すなわち、終章では、クライアントと弁護士のマッチングの重要性を指摘しているが、実は、それは著者が、弁護士ドットコムというマッチングサイトの主催者であるからであろう。そこだけ力が入っていることに違和感を感じて、自分なりの結論とした次第。
さて、主題の「刑事」と「民事」の違いであるが、こういう書き方がしてある。
制定当時想定されていなかった場合には、刑法を改正する場合もあれば、刑法以外の刑事法を作ることで対処している場合もある。
例としてあげられるのは、道路交通法、軽犯罪法、覚醒剤取締法などである。また、民事法でも刑事罰を定めた条文があるとしており、独禁法や金商法が挙げられている。
さらには、民事的な条文、刑事的な条文、さらには行政的な条文が混在する法律も少なからず存在するという。
つまるところ、実体法の法律単位では、民事と刑事は分類できないということである。
注)日本法は、刑法典以外にも分散的に各法規に罰則が定められていると、「
法の再構築〈3〉科学技術の発展と法」は整理している。
また、民事は対等当事者間の争いであるので、国家の「民事不介入」が原則であるが、これは絶対的なものでないという。
例として、「桶川ストーカー事件」から2000年にストーカー規制法ができたり、2001年にDV防止法ができたという。
つまり、国家権力がその気になれば、「民事と刑事」の垣根を乗り越えることはそんなに難しくないという。
個人的には、民事法の権化と考えられている商法に特別背任のようなばりばりの罰則付きの条文があることを素材に取っていろいろ説き起こして欲しかった。
では、結局、「民事」と「刑事」を分けて論じる意味はいったい何なのか、民事上の責任と刑事上の責任は何を基準に分けられるというのか(法律によって決まるというのなら堂々巡りである)が、だんだん釈然としなくなってくる。
さらに混乱を呼ぶのは、第3章の「「行政上の責任」と「行政の責任」」である。
本書に拠れば、法的責任には、民事でも刑事でもない「行政上の責任」があるという。確かにそれは間違いでないが、「民事」と「刑事」を論じるときに、その両者との関係を論じずに第3の責任があるとだけいうのは、やや無責任な筆致ではないかと思う。
第4章以下は、各論が取り上げられているが、どうやら弁護士業界では、「過払い金バブル」が発生しているようだ。
2006年の最高裁判決を援用すれば、直ちに勝訴できるため、案件を集めれば集めるだけ儲かるという構造があることを初めて知った。それで弁護士事務所の広告が最近喧伝されている意味がようやく理解できた。