メタローグ
この本は、タイトルから予想されるようなTVやコンピュータ・テクノロジーによる仮想現実の問題を扱っているわけではない。アヴェロンの野生児やパブロフの犬、ロゼッタスト-ンを解読したシャンポリオンの挿話に力を得ながら、<言葉>と<現実>の諸相を真摯に追い詰めていく哲学書だ。途中、小林秀雄からクリプキ、横光利一からストア派までのテキストが万華鏡のように引用されつつ、"分裂する現実"の姿が導き出される。1937年、分裂しているのは描写ではなく現実だ、とすでに喝破した小林秀雄。この言葉の持つ真の意味を、われわれはこの本で始めて理解するのかもしれない。(守屋淳)
『ことし読む本いち押しガイド1999』 Copyright© メタローグ. All rights reserved.
内容(「BOOK」データベースより)
オウム真理教事件、神戸小学生連続殺人事件…リアルとヴァーチャルの混同の果てに生じたと言われる、これら今日のカタストロフィの背後では、現実から遊離した宗教的・呪術的な言葉が、自律的な価値をもって暴走していたことに著者は着目する。なぜ、言葉と現実の関係が転倒するのか?その転倒をめぐって、何らかの歴史的規則性は想定可能か?―さまざまな言語論の比較検討に加え、思想、文学、歴史、精神医学など、多様な「知」の集積を通し、現代社会の深層に切り込む意欲作。