イーストプレスの「まんがで読破」シリーズは、
古典と現代人の架け橋として秀逸な作品が多いけれど、
漫画になっていることでややこしくなっている作品も幾つかありました。
しかしこのユングは―、
原書2冊をユングの伝記に盛り込んだ全く新しい作品であるにも関わらず、
漫画の描写、物語の組立て、ユング心理学の核、いずれもバランス良く統合され、
漫画の著者の、原書に対する想いが伝わってくるようでした。
フロイトと決別した時期から晩年までのユングの思想が、
どのように移り変わっていったのか、
時代の背景と、ユングの心象風景が共に、時代を追って描かれているので、
ユング心理学の入門書として、とてもわかりやすいです。
わかりやすいけれど、まだまだわからないことだらけなのは、
この本がユング心理学の深さをうまく表現できているからでしょう。
(わからないけれどきっとそうに違いない!)
ユングがフロイトと決別してから、独りで真理を追求していく姿は、
まるで推理小説の名探偵が真犯人・事件の真相を追っていく姿のようで、
ほとんどユングの脳内で起こっていることなのに、物語に迫力がありました。
個人的に―、名探偵コナンと重なって見えました。
コナン「そうか!わかったぞ!」
ユング「見つけた…!とうとう見つけたんだ!」
コナン「こ、これは…、青酸カリ!?」
ユング「こ、これは…、あの夢で見たマンダラ!?」
物語の妨げになるような詳しい解説はないので、
本書だけではやはり理解の限界があります。
さらに理解を深めるなら、同じくユング心理学入門として優れている、
ナツメ社の『図解雑学ユング心理学』を合わせて読むと、
双方の難解な箇所が相互に、ある程度補完できると思いました。
本書の完成度に感動したので友人に貸したところ、
さっぱりわからないとのレスポンスがあったので、
先にそちらの予備知識があったことが、
物語を存分に楽しめた理由でもあったかもしれません。
しかし、ユングに少しでも興味がある人なら、
間違いなくオススメです。