2012/02/12 総書き換え
中立説は(あくまでシンプルな仮定として)有利、不利、中立の三つに変異を分類する。しかし実際にはその中間的なものもあるはずで、有利不利の効果が弱いほど相対的に偶然の影響は大きくなる。一方、選択と偶然のどちらが重要かは集団の大きさにもよる。極端な例としてはボトルネックや創始者効果を考えればわかりやすい。ある変異がすべて単なる偶然によって失われてしまう確率は、集団が小さい方が大きい。つまり集団サイズの効果は、完全な中立と、非常に有利・不利という極端なケースの間で無視できなくなる。これがほぼ中立説の骨子。言い換えると、分子進化を考える場合でも集団サイズ(や種分化のタイプ)のような生態的要因を考慮しなければならないということだろう(だから「ほぼ中立」と呼ぶよりは「選択-浮動モデル」とでも呼ぶ方がわかりやすいのではないだろうか)。
分子時計が世代あたりではなく年あたり一定であることのほぼ中立説による説明は美しい。体が大きい動物は寿命が長く世代交代がおきにくい傾向がある(つまり変異率が小さい)。同時に集団サイズは小さい傾向がある(中立的な固定は速くなる)。変異率の小ささと固定速度の速さの掛け合わせによって年一定に近づく。後半では遺伝子重複や発現領域、エピジェネティクスの進化について選択と浮動がどう関わってきたか、どのような手法で検出できるかについて概説されている。気になるのは進化生態学のような表現型レベルの集団遺伝解析との関係だが、一切触れられていない。しかしエコデボやエコゲノミクスのような分野が発達しているわけで、統合されつつあるのだろう。
説明は全体的に簡潔で、なぜそのような結論や推定が可能なのか考えながら読まなければならず、数式を無視するとしても結構大変。用語解説があるがこれは中途半端であまり役に立たない。