真の中国通による中国の主要地区を網羅した資料集・ガイドブックとして価値ある1冊。「地球の歩き方」の中国情報では物足りなくなった人には是非お勧め。
華北、華中地方について触れられた前半は、歴史・地理的な豊富な知見のもと、文字通り出身地ごとに異なる気質について意義深い考察がなされている。
後半になるにつれ、筆者の独断も散見される個人的旅行記の色彩が濃くなっているのが気になるが、日本人があまり行くことのない中国の地方都市の風情をを疑似体験できるという点では非常に面白く読める。
ただ、私が3年間住んでいた福建省について気になる記述がいくつかあったので、指摘しておきたい。
p.155 海南島が「中国のハワイ」といわれているのは有名だが、アモイが「福建省のハワイ」というのあまり聞かない。ハワイというよりシンガポールという風情。アモイにも海水浴場があるが、海水汚染を気にして地元の人ですらあまり泳ぎに行かない。
p.156 コロンス島はドイツが租借し、日本が再開発した、とあるが、コロンス島はドイツだけでなく、かつて10カ国くらいの欧米諸国の領事館がおかれていた。コロンス島はオレンジ屋根のスペイン風の建物が多く残っていることで有名。アモイ市内の中山公園付近一帯に日本人が多く居住していたが、コロンス島の再開発をしたという話は聞いたことがない。
p.156 「飛行場はアモイ市内からかなり遠い」とあるが、アモイ空港はアモイ島内に位置し、北京や上海、福州の空港などと比べても市内からかなり近い立地にある。「世界から観光客がひっきりなしに訪れ」とあるが、欧米からの観光客は非常に少なく、アモイ空港の主要な国際線路線がある、東南アジアからの帰郷する福建省出身華僑の団体が圧倒的に多い。
以上、中国では、いろんな情報が交錯し、正確な情報の所在がつかみにくい、という中国的常識の実例でもあると思う。