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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
デビュー作『単独旅行者』で、すでに独自の世界が構築されている,
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レビュー対象商品: 出発は遂に訪れず 改版 (新潮文庫 し 11-1) (文庫)
表題作などの戦記物は今でもかろうじて他の本でも読めるが、この本には、戦後まもなく昭和22年のデビュー作『単独旅行者』が収録されている点が貴重だ。
学生時代を過ごした街へ戻ってきた「僕」は、知人のロシア人宅を訪ねてから、バスで一緒になった女と同宿して一夜を明かすが、翌日には別れて旅を続ける。それだけの話なのに、読む者はすでに島尾文学という王国が確立されていることに気づかされる。そこは「不安が転移して行く」世界であり、「身体もめちゃくちゃだし、此処(頭)も時々変になるのさ」との告白がなされる場所だ。 特攻体験から生還した島尾氏は、戦後の世界には自分の居場所がない、と絶望していたのだろう。『帰魂譚』(昭和36年)では、「私は家に帰るために、いったいどこで下車したらいいのだろう」と書いている。 さらに、原因不明の言語障害に陥った長女マヤを神経科へつれていく『マヤと一緒に』では、「家族の誰かが気がふれるというイメージを消すことができない」と記している。 端正な文章の間から、とどめようもなくあふれ出してくる作家の不安。それは、ある種の悲しい神話のように、いつまでも胸の奥で響き、こちらまで何かを喪失したような気持ちにさせられた。その意味で、ものすごいパワーを持った作品群だと思う。
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