果たして、電子書籍は出版不況を克服する「救世主」になるのだろうか?
この本は、元・光文社ペーパーバックス編集長の山田順さんが、34年間在籍した光文社を退社した直後に書いたものであるが、正直言って、私は山田さんの予想と同じく、電子書籍が出版不況を克服する「救世主」にはならないと思う。
と言うのは、出版不況を克服出来ない原因は、電子書籍の普及よりも、もっともっと根の深い所にあるからである。例えば、この本の第3章では、過去に発売された電子書籍の「シグマブック」(パナソニック)と「リブリエ」(ソニー)が、短期間で生産中止に追い込まれてしまった理由が詳しく書かれていたが、確かに山田さんの言うように、日本では出版業界に限らず、どこの業界でも「何か新しいことを始めようとすると、業界関係者が集まって、お互いの調整からスタートする」体質が全く抜け切れていない。
だから、そんな状況では、大胆なビジネスモデルの変革や、出版不況の克服や、電子書籍の普及などが全く進まないのも、当然のことだと思う。
ちなみに、私はこれまでにも、このサイトで『だれが「本」を殺すのか』(佐野眞一著、プレジデント社、のち新潮文庫)や、『出版社と書店はいかにして消えていくか』(小田光雄著、ぱる出版、のち論創社)などの、出版不況に関する本のレビューを何冊か書いて来たが、この本は、過去にレビューを書いた上記の本と同様に、出版業界全体がいつまで経っても旧来のビジネスモデルを変革出来ない理由を、はっきりと示していると言える。
だから、もし電子書籍の普及や、出版不況の克服を本気で目指したければ、まずこの本と、上記の本を併せて読んで欲しいと思う。そして、その上で出版業界全体のビジネスモデルをどのように変革すべきか、よく考えるべきではないだろうか。