おとボク2のアナザーストーリーとして二次元ゲーム文庫から刊行された一冊。ゲーム等本編のトゥルーストーリーとは全く異なる、本小説のみの完全オリジナルストーリーである。
本小説では、千早と薫子が既に「恋人同士」になっているというベースで始まっている。従って薫子はもう既に千早を「男」として見ているのだ。その分、ほぼ全てのメディアでは必ず登場する千早の女学院入学の経緯ストーリーや千早が男だとバレるプロットは完全に省略されている他、千早・薫子以外のキャラは完全にサブ扱いである。
本小説では、プロローグ・第1・2章・エピローグを除くと、そのほとんどは千早と薫子の睦みあう行為シーンである。これだけで全体の3分の2近くを占めている。行為シーンがメイン、しかも結構濃厚であり使われている単語も表現も直接的なものが多いが、決してグロくはなく、案外可愛らしいものであり、グロ系が苦手な人には安心できる。千早は我々が普段イメージしている千早とは大きく異なり、非常に「積極的」「好奇心旺盛」「興味津々」かつ「超がつくほどのスケベで意地悪」な「肉食系漢千早」であり、薫子も思春期の女の子らしく恥らいつつも千早の要求を受け入れている可愛らしさがある。
しかし意外なことに、二人の「初めて」は本文中に過去形で出来事の存在があったことをたった二行だけでさらりと書かれているだけで、本小説中の行為シーンは全て「2回目以降二人の仲を深めていくために回数を重ねて濃厚さおよび千早のスケベ度も上げていくもの」であるのは、この類の小説では珍しいパターンではなかろうか。
行為シーン以外では、夏休みの海水浴場話も必見だ。千早は元の「御門千早」として男子更衣室に入るのか、それとも「妃宮千早」として女子更衣室に入るのかの選択のドキドキもさることながら、千早が豹柄ビキニを身に纏って薫子と一緒に水着美人コンテストに出場を余儀なくされるなど、話題は絶えない。一方で、この章での侍女の史はやっぱり史であり、千早を監視する「昆布の精」として君臨しているのがミソでたまらない。
おとボクシリーズ共通の「ストーリー重視」は本小説でも活かされており、おなじみパラダイムノベル版と比較すると、パラダイム版は完全にストーリー重視で行為シーンは皆淡白なものだったが、本小説は、オリジナルながらストーリーも濃厚な行為シーンも両方楽しめる「よくできた一冊」であり、この手の小説にありがちな辻褄の合わない組み立てやつたない文章力というのは比較的見受けられない。一度だけでなく何度も目を通し読み返してみるとますます面白くなってくることだろう。
本小説のみの完全オリジナルアナザーストーリーとして、千早・薫子「恋人同士の二人」の濃厚な睦みあいを楽しめたら幸いな一冊である。