ともすれば扇情的な邦題(原題はThe Horseman)や、おどろおどろしい装丁で敬遠する向きもありましょうが
中々の「力作」です。
パッと見は娘を殺された父親による「復讐劇」といった印象を受けます。
実際、その通りではあるのですがそこに暴力を行使して悪を裁く主人公をヒーロー然として描く「娯楽映画」の気配はありません。
やはりオーストラリア映画である点が影響しているのでしょうか、同じような設定のアメリカ映画とはかなり雰囲気が異なります。
娘を殺害された父親による復讐のための暴力を観客に肯定させるにはその動機を明確にしなければならないと思うのだが、
ポルノビデオ撮影時に暴行を受けて命を落とす娘の受難シーンは意外にも全くと言っていいほど出てまいりません。
そうなると娘の死に関係した連中に壮絶な制裁を加える父親の行為を観客を納得させるのが難しくなり、
普通なら暴力描写が感情から切り離されてしまって、インパクトが失われてしまいそうなものです。
ところが本作はそうなっておらずラストまでテンションが途切れることはありません。
その理由は主人公、クリスチャンを演じるピーター・マーシャルの熱演と過剰にスタイリッシュに仕上げようとしない演出のおかげですね。
娘の死の真相は描かれませんが、その幼き日の姿はたびたび回想として描かれ、父のわが子への思いとその命を救えなかった悔悟の念がヒシヒシと伝わって来ます。
復讐の念がつのり、仇を討つための暴力行為に次第に耽溺して行く様は中々鬼気迫るものがあります。
そこに彼が拾ったティーンエイジャーのヒッチハイカー、アリスが入りこみ、彼女との会話を通じて主人公と亡き娘の関係、そしてその喪失がもたらす深い悲しみが伝わって来ます。
この手のジャンル作品でこのようにドラマ部分がきっちりとしているのも珍しいですね。
暴力描写のインパクトは中々に強烈。
復讐の為にはどんな手を使うことも厭わず、また用が済めば逡巡せず殺める主人公が次第に狂気に苛まれて行く様には迫力があります。
しかし本作がその他大勢の「暴力映画」とは違ったヘヴィーな印象を与えるのは主人公も容赦なく傷つく様を描いているからでしょう。、
アメリカ映画のようなスタイル優先のアクション描写ではなく、生身の人間同士による「殺し合い」の描写は飾り気がなく壮絶です。
実際にはギリギリのところで肝心のところは見せない抑制が効いているのですがクライマックスだけは「ホラー的」でかなりキツ目の描写が連続します。
しかしそこに至るまでに主人公の感情がしっかりと描かれているのでキワモノめいた雰囲気はありません。
「暴力映画」に何を求めるかによって評価は変わってくると思いますが主人公を演じるマーシャル氏の熱演のおかげで「ドラマ」としても十分に見る価値がある作品になっております。
でも流血や暴力描写が苦手の方にはやっぱりおススメしにくいなぁ。