前作(出版順でいう、「すべてがFになる」)と比べて云々、というレビューが目立ち、
それが本作があまり高評価でない要因になっているように見受けられます。
はたして、前作と比べて本作は見劣りするのか?
本作もやはり理系理系していています。
例として、中盤、手に汗握るスリリングなシーン(萌絵ちゃんが・・・!)が展開されますが、
ここでの構成要素に、パソコンにあまり馴染みがない方には分かりにくい、
しかし当時を知る人には、おぉっ!?と思えるようなネタがあります。
また、今回は舞台そのものがおおよそ理系という物質で構成されている、
と言っても過言ではありません。
当然、それだけで理系小説?くらだらない・・・なんて言わせない面白さがあります。
今回は前作のような、敢えて言うなら「森博嗣式推理小説」とは若干異なるかもしれません。
趣向性の違いとでも言いましょうか。
上記にも挙げましたとおり、サスペンスのような、
ドキドキハラハラせずにはいられない展開が見受けられます。
謎が謎を呼ぶ、不可解な現象が次々と起こる・・・というよりは、
物語りが進行する度に新しい発見あったり、予想だにしなかったピンチが迫り来る・・・、
という感覚を抱きました。
どうなってしまうのか? 大丈夫なのか?
不安と期待をない交ぜにした感情は、ページをめくる指を止めさせてくれません。
ですがそこは森博嗣、数学の解を証明するように、
きちっと話しは進んでいき、謎をすぱっと解明していきます。
前作は本当に先を予想させない未曾有の推理小説でしたが、
なら本作が霞むかというと全くそんなことはなく、
悲しみと憎しみに囚われたピュアな親子愛の行方を織り交ぜつつ、
前作同様、読み手をぐいぐい引き込む大変面白いミステリーを描いたように思います。
方向に多少の違いはあれど、前作で森博嗣氏が好きになった方なら、
私は今作も何の迷いもなくお勧めできる一冊だと思います。
新しい登場人物と、犀川先生&萌絵ちゃんの関係の変化?だって楽しめるのですから。