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しかしそれだけだと思ったら大間違い。冬子も、愛子も、人の子、怖いこともありゃあ、泣くことだってある。冬子は天丼ひとつで人の情けに涙し(この挿話がとてもいい)、愛子は日本が戦争にまきこんだ台湾の人の、戦後、文句ひとつ言わなかった心情に落涙する。読者のみなさん、そこをよーく読みとってください、と両姐御は紙背からガンを飛ばしている。
怒っても泣いても、この二人には憎めない愛嬌がある。それはいったいどこから来るのだろう。人生へのまっしぐらな猪突猛進の姿勢からだろうか。そして今、当然(失礼)のごとく、彼女たちの関心は老い向けられている。上坂冬子は、高校生のうちから老いとか死を教えるべきだという昨今の考え方に、こんなアホな説、猛反発したいと一蹴。そんなもの、個人個人が胸のなかで、その場にたどりついてから実感するのが老いで、観念で理解した老いなんて老いじゃない。そんなことする暇があったら物理でも数学でも勉強して脳味噌鍛えろ! この過激さがいい。したり顔なんかしていない。この二人、とかく吠えたがります。
この本の読者も、たぶん吠えたくなるはず。吠える材料なんて、狭いニッポン、イソグもイソガナイも、足の踏み場もないほど転がっているもん。いざゆかん、この覇気!
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