少年が幼い妹と田舎の祖父の家で過ごすひと夏の出来事を綴った作品です。
これだけ聞くとひどくありがちな題材に思えますが、
井上靖の「しろばんば」などを思わせるリアルな子供の心理の描出が
作品を秀作に仕上げています。
また、同種の映画でよく描かれる大人と子供のすれ違いばかりでなく
子供同士の行き違いや大人同士の齟齬もけれん味なくリアルに描写されており
物語を奥行き深いものにしています。
澄んだ川や田んぼ、眩しい空、生い茂る木の葉など
ノスタルジックな感興を喚起するカットを随所に散りばめながらも
物語は時としてかなり醜い現実も抉り出しています。
特に知的障害者と思しい少女を農民の一人が弄んで孕ませるエピソードなどは
淡々とした語り口かつ第三者の少年の目を通しているため
描写自体はかなり曖昧であるにも関わらず実に嫌な気分にさせられました。
しかし、そうした目を背けたくなる様な地方の後進性を含めて
写実的に描く姿勢には好感を持ちました。
それはさておき、くだんの少女には
普段は「誰でも殴る変な奴」と子供たちから
残酷な哄笑を浴びせかけられる立場にいながらも
主人公の幼い妹を咄嗟に線路から抱きかかえて逃げ事故を未然に防いだり
小鳥の死に涙し木に登ったりするなど
どこかシャーマン的な聖痴愚のイメージも付与されています。
リアリズムに沿った作品の人々の中で彼女の存在は文字通りやや異形ですが、
寓話的で不思議な彩りを作品に加味し、
緩やかなテンポの映画を単調さから救っています。
若い叔父とその恋人の結婚騒動や
少年たちが偶然目撃した窃盗事件の顛末、
遠方にいる母親の病状を巡る家族の心痛も
飽くまでどぎつくならない程度に描かれており、
少年の目を媒介する設定が最後まで破綻せず生かされている点に
作品の雰囲気とは裏腹に作り手の周到さを感じました。