健さんのために書かれた脚本、ヤクザ映画がすたれたのち生まれた優れたヤクザ映画の一本。倉本総の脚本がいい。全編に哀感と悲しみが溢れていますが、あえて男とはいわず、日本人の美学や倫理観のようなものが描かれており、私たちのような世代はいつまでも共感を覚えます。健さんがかっこいいのは言うまでもありません。それはもう語りつくされているといってもよく、私はその他の出演者の魅力を書きたいと思います。まず、なんといっても池部良です。映画の冒頭シーン、暗い海辺、兄貴分の池部良を健さんが組織の命に従って殺すシーン。短い出演時間でした。「なんとかならねか。見逃しちゃくれねーか」無理を知りながら健さんに頼む池部良。娘がいるのです。黙って聞いていた健さんが、ブスっと刺します。たったこれだけのシーンですが、池部良のヤクザは絶品です。東宝の二枚目だった池部良をヤクザに最初に起用したのは松竹の篠田正浩だったと記憶してますが、これが素晴らしかった。この映画でも、このシーンは名シーンと思います。そして、今は亡き小池昭雄の親分が、悪事を働いた後、健さんに殺られる際、同じように「子供がいるんだ。見逃しちゃーけれねえか」と懇願するのですが、ここでも健さんは無言で一気に刺します。このシーンもよかった。懐かしい名画です。これからも見るでしょう。