イラク戦争のアメリカ軍が退廃的な状況にあったことはアブー・グレイブ収容所での、米軍による囚人虐待で広く知られることになったが、本書に納められた証言群は、この虚の口実(大量破壊兵器の存在)で始められた戦争が、最初から最後まで―若者のリクルートから帰還兵士の切り捨てに至るまで―、虚偽と腐敗と倒錯に満ち満ちていたことを教えてくれる。
しばしば十分なサポートもなく市民生活のまっただ中に放り出された若者たちが、ありとあらゆるものに敵意を想定して訓練通りの戦闘マシーンと化し、近づくものすべてに銃弾を打ち込んでゆく。殺した相手が武器を持っていなかったときは、用意しておいた銃を死体の傍らに置く。軍用車が子どもを轢いても、放置する(映画「告発のとき」はこのモチーフを使っている)。間違った家を捜索して、子女をなぐり倒して住居を破壊し、間違った人間をとらえても、「どうせこいつもなにかしている」からと、収容所に送る。殺戮や虐待の動機には、人種的憎悪も含まれる。将官たちは戦場の兵士の現実を無視して、無謀な行動を強い、士官の提言にも耳を貸さず、潤沢な資金を持つ傭兵会社や兵站会社が大きな顔をする。
負傷し、心に重い負荷を負い、時に精神に異常をきたした帰還兵士たちは、軍施設の病院で満足に予約も取れない。抗議すると、さまざまな圧力がかかり、処分され、約束の奨学金も与えられない。こうした異様な経験を経た兵士たちの若さ(二十歳そこそこ)に、恐れを感じざるを得ない。だまして志願させ、見捨てるのだ。「毎日18人の帰還兵が自殺する」現実のなかで、元兵士たちは、一様に自分たちが受けた不正と瞞着に怒り、罠にはまった自分たちがイラク市民にしかけた狂気の暴力を深く悔いて、謝罪している。
「反戦イラク帰還兵の会」がこうした公聴会を組織して、戦争の実態を告発したのは大変重要だ。奇妙な沈黙を通して、大マスコミがこの米国の恥部を必死に隠し、また、近頃は、イラクでの失敗をもみ消して、偉大な米軍のイメージを復活させるために「ダルフールに軍隊を送れ」という運動が盛り上がっているというから。原著から1年、迅速かつ正確に翻訳書を仕上げた訳者たちと出版社の努力とアンガジュマンにも敬意を表したい。ぎりぎりに追い詰められた若者たちの苦渋に満ちた証言を、生き生きと日本語に再現して伝えている。
イラク・アフガン戦争は終わっていない!必読。