「冠婚葬祭」の本といえばノウハウ本に決まっていて、ふつうは面白くもなんともないものです。そのつまらなさそうな素材を取りあげて、江戸時代の習俗を調べ、明治時代から説き起こし、膨大な文献を読み解いて料理してくれました。最後に笑いのスパイスをたっぷりふりかけて食べさせてくれるのが本書です。
「岩波文庫は、まじめ一方で面白くない」なんて先入観を持っていたら、大間違いですよ。
斎藤さんによると、私たちが慣れ親しんでいる結婚式やお葬式のスタイルは、そんなに遠い起源があるわけではありません。
江戸時代までの日本は血縁よりも地縁を大切にする社会で、「家」を中心にした家族制度なんて、人数比にしてわずか2%でした。その2%をモデルにした「家父長制度」が民法として整備され、日本は地縁から血縁を重視する社会に変わっていきます。
「しきたり」「伝統」「作法」なんて、蓋を開ければ、案外とそんなもの。「冠婚葬祭は怖くない。ある意味それは、抱腹絶倒の文化なのだ」と著者は断定しています。
第二次世界大戦後、憲法は新しくなっても、慣習はなかなか変わりません。
新しい民法では、新婚夫婦の戸籍は新たにつくるものであって、夫の戸籍に妻が入るわけではありません。なのに、いまだに“入籍”という言葉が残り、96パーセントの夫婦が夫の姓を名乗っている。こんな社会を「半分だけ民主主義」と著者は命名していて、辛らつな口調で男性中心社会をチクチクと風刺していますよ。
かと思えば、戦後の冠婚葬祭本を分析しながら、この種の本にはベッドイン後のテクニックまで登場することを指摘して、
「このへん下手なナンパ読本よりよほどよくできている気がするが、
もったいないので中身は教えてあげない」
と読者をはぐらかしたりもしています。
いやぁ、ほんとにおもしろいです。
ぜひ手にとって、お楽しみください。