この本はロンドンでの大回顧展「私・生・死」(Self・Life・Death)に向けて、40年にわたる制作秘話を一挙公開したもので、著者が一人で写真について語る部分と和多田進氏のインタビューの部分に分けられる。しかし一番読み応えがあり価値深いのは、巻末付録の杉浦日向子さんとのトークである。著者は後にテレビで「口には出さないけど、お互いこれが最後なんだとわかって会って写真を撮った」と述べている。杉浦さんはこれから1年を経ずに下咽頭がんで亡くなった。放射線治療で焼けた首元も晒してしっかり正面を向いている杉浦さん。「あのね、日向子さんがね、葬式写真撮れっつうから、ずっと、死ぬまで撮ってくれっつうから」という部分が載っているが、最後の写真はまさに立派な遺影である。