4年の歳月を費やして、海外各地の戦前・戦中に建てられた神社跡を巡るルポルタージュ。
神社に限らず、北のサハリン、満洲などは比較的建造物が残っているが、
激戦地が多かったためか南方には偲ぶべき遺構は少ない。
北方に残る行政などの建物は、実用価値があるから残されるのも分かるが、
神社などは、まさしく“日帝”の遺物。
略奪にあったり破壊されたりする中で、しかし、無事に残ったものもあるという。
その地域の状況や、日本人と現地人との関係にも拠るのだろうが、戦跡巡り
とは違う宗教観や生活感が感じられて興味深い。
その方向性でもう少し深く抉る視点があると、この本に一本(ノンフィク
ションに不可欠な)スジが通ったのにと思う。
さらに、「何かわからない文字‥」「扉の裏側には家紋のような紋様‥」
などのように、分からないものを分からないままにしている姿勢も、気になる。
前者は写真がないので私も分からないが、後者は明らかに皇室の桐の紋だ。
ちょっと調べれば分かることなのに、と思う。
自分の見たものにあまりに重きを置きすぎて、誤解したり、誤った観念に
とらわれて「未来を構築」(前書きより)することは、あまりに危うい。
そういう意味で、著者はニュートラルというより、ナイーヴで、ある意味イノセントだ。
しかしそれでも、この本が旧領や旧占領地への旅はもちろん写真の整理も含め、
大変な労作ではある。