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25 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ただの写楽追跡ではなく,続編が楽しみ,
By カマン (札幌市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 写楽 閉じた国の幻 (単行本)
作者は著名な推理作家です。本書はミステリー形式で,主人公の不幸な浮世絵研究者が東大工学部の女性教授の助けを借りて写楽の正体を追いかける話です。物語は途中から写楽の浮世絵を出版した蔦屋重三郎が主人公となり,写楽を世に送り出す話と交互に進み出します。読み進めるうちに,作者は写楽の正体について新説を提示することが目的ではなく,なぜ蔦屋重三郎が写楽を世に送り出そうとしたのかを述べたかったのではと考えるようになりました。表題からも感じられるように,江戸の町には閉塞感が漂っています。蔦屋重三郎が既得権にあぐらをかく者の代表として歌舞伎役者を揶揄し,既成概念を壊そうと写楽を作り上げます。 写楽の絵の本質は,虚飾にまみれた役者にその本当の姿を突きつけるものだと作者は考えているようで,蔦屋重三郎にそのことを語らせます。確かに,男が女を演じることなど歌舞伎になじみがない人には妙なものです。名優すなわち老人が皺一つ無く,美男美女に描かれる浮世絵は,虚構のものかもしれません。 作者の指摘した写楽の正体はあまりにも突飛でしたが,歌舞伎や浮世絵に関する綿密な資料と時代背景の描写は単なる思いつきとは思えませんでした。写楽に関する諸説も綿密に解説されております。後書きを読むと,かなり長い間アイデアをねっていたようです。 物語は写楽の正体を主人公が指摘したところで終わりますが,不幸な主人公の今後はどうなるか,女性教授の正体はなど未解決の謎が残されたままでした。ぜひ,続編を読みたいと思います。
11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
図版を載せるべき,
By リマスター (名古屋市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 写楽 閉じた国の幻 (単行本)
「このミステリーがすごい!2011年版」で2位の評価と浮世絵好きなので読んでみました。一番思ったのは「文字で絵を語る」難しさです。 例えば「写楽が描く鼻」はこうだ、「耳の描き方」はこうだという場面で 図版が示されていれば一目瞭然なのに何とも歯がゆい思いをしました。 私は家にある画集をかたわらに「なるほど」と納得できましたが、文中にある 作品等も知らないとピンとこないだろうなと思います。 せめて、この小説の中で重要な作品は巻頭に写真を載せるとかすれば より多くの、浮世絵に詳しくない人もわかりやすかったと思います。 さらに、作中に出てくる文書の一部もあたかも登場人物と同時に見てるかの ように載せるとかしても面白い。型破りな写楽を語るなら、型破りな小説に したっていいと思います。 「現代編」「江戸編」と交互に語られますが、どちらか一方だけでも 良かった気がします。江戸編が唐突に始まった時は面喰いました。 ノンフィクションのような現代編の後に、江戸編が始まると何故か嘘臭い 本当に空想じみた違和感がありました。最初から江戸だけの時代物なら別です。 この構成には難を感じました。読後、回転ドアや離婚危機のエピソードが 必要だったのか?疑問です。
6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
極論すればこれは島田荘司の写楽の研究本だ。,
By Spenth (神奈川県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 写楽 閉じた国の幻 (単行本)
私のようなかつての島田荘司のファンにとっては、 賛否両論あることだろう。人によっては認められないものかもしれない。 それほどまでにスタイルが違う。 極論すればこれは島田荘司の写楽の研究本だ。 東州斎写楽は日本美術史上、最大のミステリーだ。 突如として現れ、活躍した期間はわずか10ヶ月。そして忽然と姿を消す。 写楽という絵師に関する記録は何も残っていない。文献はもとより噂話の類いもないのだ。他の絵師達はこのようなことはない。有名無名を問わず、おおよその素性や絵師になるまでのエピソード、風貌、人柄、性癖までも大なり小なり後世に伝わっているのだ。このようなものがないのは写楽ただ一人。写楽がどういった人物なのかは完全な謎である。 本書はその「写楽探し」が題材だ。 浮世絵研究家・佐藤貞三が、この「写楽探し」に挑むのだが、佐藤は島田荘司その人だ。 彼は今回自分では敢えてミステリを作らず、既にそこに存在して誰も解き明かせなかったミステリに挑むことにしたのだ。 立てた仮説を検証し壁にぶち当たり、それを突破したと思ったら、また新たな壁が立ちはだかる。 まさにスクラップ&ビルドだ。 そしてこの「写楽探し」の旅は、かつて誰も想像しえなかった結論へと着地する。 「本格ミステリー宣言」を掲げた島田荘司でなければこの視点はなかったかもしれない。 学術書ではないゆえの自由な発想と着眼点は、しかし説得力がある。 このイマジネーションこそが、本書の高評価の理由だろう。 全体としての出来はよくはない。 元々彼は直観型の作家であり、最初に入念に計算して書くタイプではないだろうし、しかもこれは週刊誌の連載ものだったから、余計にまとめるのが大変だったのだろう。 息子の回転ドア事故の裁判の結末も、肉筆画の謎すらも解明されておらず、明らかに何かの伏線であろう美貌の東大教授の存在もなんら理由を持たせず、お預け状態。 本書だけではまだ道半ば。小説としてはまだ完成されていないのだ。 課題は次に持ち越された。 が、私は充分価値あるものだと思う。
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