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最も参考になったカスタマーレビュー
5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
説得力に富む写楽とは誰か,
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レビュー対象商品: 写楽を追え―天才絵師はなぜ消えたのか (単行本)
寛政6年(1794)5月にデビューし、僅か10カ月で消えた浮世絵師、東洲斉写楽について明確な答が得られる本だ。「江戸名所図会」はじめ多数の文献を残した幕末屈指の文化人、斉藤月岑が50年後に記述した「写楽=斉藤十郎兵衛」を多角的に立証している。阿波藩お抱え能役者という士分であった斉藤十郎兵衛が1年間の休暇を利用して絵筆を取ったという仮説も説得力に富む。謎解きのおもしろさがある上、写楽作品を歌舞伎の筋立から解説しているので、作品鑑賞にも役立つ。唯一の欠点は寛政2年に崩されて無くなった中洲が蔦重と写楽の物語に登場すること。緻密な考証を進めた著者らしくないミス。星一つ減点である。
5つ星のうち 5.0
写楽の正体とは、そして、なぜ忽然と消えたのか,
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レビュー対象商品: 写楽を追え―天才絵師はなぜ消えたのか (単行本)
東洲斎写楽と名乗る浮世絵師が、寛政6(1794)年5月に彗星のごとく現れ、翌7年2月までの僅か10カ月間(寛政6年には閏月があった)にとびきり個性的な約140点の役者絵と数点の相撲絵を残し、それきり忽然と姿を消してしまった。写楽とは、いったい誰なのか。我が国で最も人気のあるこの正体探しが賑やかに繰り広げられ、葛飾北斎だ、いや円山応挙だ、谷文晁、歌川豊国、酒井抱一、司馬紅漢、蔦屋重三郎、十返舎一九だと、名を挙げられた者は数十人に上ったのである。 この正体問題に説得力のある結論を出したのが、写楽研究者の内田千鶴子である。『写楽を追え――天才絵師はなぜ消えたのか』(内田千鶴子著、イースト・プレス。出版元品切れだが、amazonで入手可能)の著者が、長年に亘る緻密な研究の結果、写楽は阿波藩(現在の徳島県)お抱えの能役者・斎藤十郎兵衛と突き止めたのであるが、この地道かつ執拗な研究には本当に頭が下がる。この説は今や研究者たちの間で定説として認められている。さまざまな難関を乗り越え、「写楽=斎藤十郎兵衛説」を鮮やかに証明していく過程は、正に推理小説のようにスリリングで興味深い。 反対派の研究者たちから斎藤十郎兵衛の実在は疑わしいと反論された時期があったが、徳島「写楽の会」メンバーの斎藤十郎兵衛の菩提寺と過去帳の発見によって、実在が完璧に証明されることになった。「写楽の会」メンバーが、1997年、江戸期には築地にあった法光寺という寺が現在は埼玉県越谷に移転していることを突き止め、その寺の調査から過去帳に斎藤十郎兵衛の没年月日を発見し、報告した。没年は「辰(文政3<1820>年)3月7日」、死亡年齢は「58歳」、俗称等は「八丁堀地蔵橋 阿州殿内 斎藤十郎兵衛事」であった。これによって没年が初めて明らかにされたのである。 斎藤十郎兵衛は、阿波藩お抱えの能役者でありながら、なぜ10カ月も江戸の芝居小屋に入り浸って、役者に生き写しの、役者の欠点を強調するかのような毒を秘めた強烈な絵を大量に描くことができたのか。彼は江戸藩邸勤めのため八丁堀地蔵橋(現在の中央区日本橋茅場町)に住んでおり、大名お抱えの能役者の勤めは当番と非番が半年か1年交替のため、その非番期間を利用して絵を描くことが可能だったのである(この時、写楽33歳)。 なぜ写楽が斎藤十郎兵衛であることが秘密にされたのか。大名お抱えの能役者という下級武士であろうと武士に変わりはないため、当時、その実名と身分を明らかにすることは憚られたのである。 正体と並ぶもう一つの謎は、なぜ写楽は忽然と消えてしまったのかということである。著者は、写楽の才能を発掘し写楽の大胆な絵に社運を懸けた版元(出版業)・蔦屋重三郎と写楽の連合軍が、ライヴァルの版元・和泉屋市兵衛と浮世絵師・歌川豊国の連合軍との壮絶な戦いで、最初のうちは圧倒的な勝ちを収めたものの、短期間のあまりの大量制作が祟って写楽の絵の質が落ち遂に敗北を喫したためと考えている。写楽作品は浮世絵師である写楽とプロデューサーとしての重三郎の共同作業から創り出されたと言っても過言ではなく、2人は文字どおり運命共同体だったのである。 写楽が消えた理由が著者の言うとおりか否かは、巻頭の写楽の役者絵(カラー)の「松本米三郎のけはい坂の少将、実はしのぶ」、「市川鰕蔵の竹村定之進」、「三世大谷鬼次の奴江戸兵衛」といった力作の数々と、巻末付録「東洲斎写楽と歌川豊国、宿命の対決――二人の絵師は同じ舞台をどう描き分けたのか」(カラー)をじっくりと検分した上で、私たち読者自身が判断すべきだろう。
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