この本に書かれていたことを読んで、多くの人は驚いたらしい。
仕事で成功し、大きな財産を築き、優しい夫に恵まれても鬱になることがあるのだ、と。
しかしこの作家が、離婚に傷ついた、男性の承認を強く求めるタイプの女だと考えれば、鬱は予想された当然の出来事なのである。
作家は、新しい夫がいると強いストレスを感じる。
なぜなら、おびえているからだ。第二の夫に、第一の夫のように嫌われてしまったらどうしようかと不安だからだ。
だから夫に対してものすごく気をつかうし、夫がくることにストレスを感じる。
そのストレスは「夫を失うかもしれない」という不安からくるものだから、作家の「夫がストレスになるから、できるかぎり離れていよう」とする行為は、ますます不安を増幅して、病はどんどん進行するわけである。
病気の原因に気づいていないのは、本人だけなのである。
案の定、病が抜き差しならないほど酷くなって(これは彼女の防衛本能による意図的な悪化だろう)、夫が彼女といっしょに住まざるをえなくなるに至って、彼女は回復するのである。
精神分析的に見ると、ものすごくわかりやすい事例である。
単行本版には、日記に空白期間が多く、その時期何が起こっていたか(病状の悪化。鬱が酷いときには文章は書けない)わからないので、加筆補完した文庫本版をおすすめします。