本当は☆3.5くらいにしたいところだが、ないので4とした。
江戸川乱歩賞というと、「お勉強ミステリー」という言葉を思い浮かべるが、この作品に限ってはそうではない。極めてオーソドックスな手法で書かれた作品と言える。まずまず面白く読め、70〜80点は付けられる。
ただ、何度も最終に残った作者の作品にしては、文章に少し拙い面があると感じた。特に、登場人物のセリフが普通の会話に近く(小説のセリフは実際の会話とは違う)、冗長かつ緊張感をそいでいる面がある。
また、巻末の選評では、視点の移動などが一つのレトリックになっているとして好評価したものもあったが、これは疑問だ。場面や視点の切り替わりの最初に出てくる文章で必ずと言って良いほど主語を省いてあるのはかなり気になった。もしかして作者は、こういう書き方がプロっぽく、かっこいいとでも思っているのだろうか。もしそうだとすると、それは大きな間違いだと思う。少し読み進まないと場面が把握できないから、読んでいてイライラすることもある。リーダビリティの悪化を招く一因にもなっている。横関氏には、この辺りは真っ先に改めていただきたい。
ミステリーにありがちな「ご都合主義」はこの作品にも少し見られるが、最後の、逃亡している万季子と正樹が偶然、刑事の恋人である博美と一緒になるところ以外は特に違和感を覚えなかった。
スケールはやや小さく感じるものの、全体的に読みやすく、良くできたテレビの二時間ドラマを見るような安心感がある。少なくとも、今年度の江戸川乱歩賞受賞作として、特に不足はないレベルの作品だと思う。