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再会と別離
 
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再会と別離 [単行本]

四方田 犬彦 , 石井 睦美
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

23年の月日を経て再会した二人は、互いの人生に起きたいくつもの出会いと別れを手紙にして語り合った。今なお消えぬ苛烈な記憶と対峙するドラマの中で、友情と死、親と子の確執、そして恩寵としての再会が論じられていく。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

四方田 犬彦
1953年西宮生まれ。東京大学で宗教学を、同大学院で比較文学を学ぶ。明治学院大学で映画学を講じるかたわら、文学、映像、音楽、アジア論といった領域で批評の健筆を振るう。『月島物語』で斎藤緑雨賞、『映画史への招待』でサントリー学芸賞、『モロッコ流謫』で伊藤整文学賞、講談社エッセイ賞、『日本のマラーノ文学』『翻訳と雑神』で桑原武夫学芸賞を受賞

石井 睦美
1957年神奈川県生まれ。フェリス女学院大学卒業。『五月のはじめ、日曜日の朝』で毎日新聞小さな童話大賞、新美南吉児童文学賞、翻訳絵本『ジャックのあたらしいヨット』で産経児童出版文化賞大賞、小説『皿と紙ひこうき』で日本児童文学者協会賞を受賞。また、駒井れんの筆名で著した『パスカルの恋』で朝日新人文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 155ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/09)
  • ISBN-10: 4103671076
  • ISBN-13: 978-4103671077
  • 発売日: 2011/09
  • 商品の寸法: 19.6 x 13.5 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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一人の男と一人の女が出会えば、光と闇の中でさまざまな記憶がはぐくまれ、二人の間にはいくつもの時間が音を立てて流れはじめる。

これは五〇歳代の真ん中までてんでに漂流し続けてきた二人の作家が、来たるべき再会を前にして、彼らの過ぎこしと行く方をゆくりなく心をこめて語り尽くした真情あふれる魂の交流録である。

それは期せずして彼らの半生の呼び出しと向き合いの機会ともなり、男が幼き日々の父親への憎悪と軽蔑をあからさまにすれば、女は別れた夫の自滅の原因はおのれの不明にあるとする心も凍り付くような告白を行い、彼らの交換日記は単なる消息通知から突如お互いの全存在を賭けた魂の格闘技の様相を呈して読む者を慄然とさせる。

彼らが閲したあまたの生、そしていくたの死! 失われた時が一挙によみがえり、闇の奥に秘められていた彼らの実存が色をなして立ち上がる時、希望と絶望の鐘が鳴り響き、彼らはたしかにもうひとつの生を生きはじめるのである。

今日こそは毀れた夢を繕う日愛する魂よ美しく装え 蝶人
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見出された時 2011/10/6
By gg2
23年の年を経ての再会を果たした評論家と作家の往復書簡である。
再会を祝する挨拶からはじまった二人の対話は、「再会と別離」を
めぐって発展していく。

その時、この往復書簡という形式ほど、似つかわしいものはない。
手紙は、電話や電子メールと違って、時間を織り込んだメディアで
あるから。

年若くして亡くなってしまった友人をめぐるエピソードや、石井氏
の先生である中村真一郎をめぐる思い出話。さらにもっと個人的な
体験をめぐる深い対話へと話は深まっていきます。

一日で読んでしまうのではなく(分量的には2〜3時間ぐらいで
通読できてしまうぐらいのものですが)、少しインターバルをおい
て、読みたい種類の本です。

一章読んで読んでは本をおいて、翌日になるのを待って、続きを
読む。そういうタイプの読書が似合います。

自分自身が、こういうテーマで手紙を書くとしたら、どんな順番で
誰のことを書くのがよいだろうと考えました。途中までで、放って
おいた『トムは真夜中の庭で』について、深い解説が得られたこと
も余得でした。
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By 桜桃
 石井睦美との往復書簡の中の第7書簡「別れを語ることは別れからの解放だ」だけに触れる。自分の最も語りにくい別離の体験をおそらく初めて四方田はこの本で語った。体験が人間を作るのではない。自身の体験を世界の歴史の中に浸しては取り出すという膨大な作業を通して、ようやく人々が受け止めることのできる何かになるのだ。

 子供の頃の朝の食事はただ恐ろしく緊張した時間であった。母親はトーストにバターやマーマレードを塗って紅茶と一緒に食べた。父親はご飯に卵をのせてかき混ぜ、味噌汁をかけて食べた。弟と微妙に雰囲気を読み取って、どちらかを選ばねばならなかった。どちらを選んでも、両親のいずれかから睨まれるか、冷ややかな眼差しを向けられた。小学校へ向かう道でやっと安堵の息を吐き、あと23時間は緊張しないですむと思うのだった。

 母親と父親は趣味嗜好から子供に対する態度まで全て完全に違っていた。母親は箕輪の裕福な家庭に生まれ育ったブルジョワ令嬢だった。洋画とピアノを弾くのが趣味だった。終戦は14歳の時、また神戸の菓子屋でシュークリームを食べられるとまず思った。一方父親は出雲市の4男坊で幼くして父親が病没したため、ひどく貧しい少年時代を過ごした。苦学の結果京都大学で社会学の学位を得て、軍隊生活の後神戸の小さな貿易会社に勤めた。西洋かぶれをしたブルジョワに計り知れない怨恨を抱いていたようだ。

 日ごとの鬱屈感と劣等感は相当なものがあり、父親はもっぱら子供への暴力で解消した。殴りつけ蹴りつけた。母親が聞いていたレコードをひどく酔って帰宅した父親はプレーヤーからもぎ取り、棚の音盤も足で押さえて割り続けた。この卑屈な行為以来軽蔑しか持たなくなった。

 ある深夜母親は二人の子供を起こしてアルバムの全てから父親の顔を見つけてマジックインクで顔を塗りつぶせと命じた。高校生になった頃、子供部屋から大江健三郎の作品集が6冊残らずなくなっていた。父親が破り捨てたのだ。負けじと父親が趣味で描いていた油絵のキャンバスにジャムを塗りつけた。父親の机にはこれ見よがしに、大きな出刃包丁とや包丁が並んでいた。そして弟と二人で何本ものネクタイを首吊りの縄のように忍び込んだ寝室の天井からぶら下げた。

 とうとう父親は家を出ていった。その春の日はアジアのどこかの国の開放記念日のように克明に記憶している。父親を一家に闖入してきた害虫のように駆除を望んでいた。父親は社会階層に由来する憎悪から最後まで自由になれなかった。離婚調停は裁判が4年も続き、大学を卒業する直前に母親は敗訴し、祖父から結婚祝いに与えられた土地と3軒の借家を夫に奪われた。母親はひどく落胆したが、母方の姓を名乗れるというだけで十分だった。弟は父方の姓を名乗った。

 最後の証人喚問の時裁判官は何か子供として発言したいことがありますかと尋ねた。父親が母親を裏切ったのだから、母親にも同じように父親を裏切ってほしかったと思います。ずっとあとになって母親はよくもあんな恐ろしいことを口にできたわねえと。中学生のときからいつも考えていたのだ。

 四方田犬彦は世界のあらゆる書物と土地とを渉猟し、真の意味で知的な偉大な人物である。書物を通して私は十数年間接している。T・イーグルトンは「人生を深め豊かにするには、性と階級差によって分断されている社会をどうしても変革せねばならない」と言う。そのための文学であり批評であると。この意味で四方田犬彦は真の知識人である。その書物は読んでいるときにも読んだあとにも素晴らしい時間を与えてくれる。知的世界は地中深い根の先に人生の喜怒哀楽の渾然一体となった基盤をもっていたのだ。

 
 今回は壮絶な子供時代の体験に激しい衝撃を受けた。そして、なぜ私がこれほどまでに、切ないほどに四方田犬彦の書物が好きかがよくわかった。

 
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