本書は、この社会不安障害を克服し、より前向きに日々をすごすための訓練法を紹介する。一般には認知行動療法と呼ばれるものだ。著者はオーストラリアの心理学者で、そのメソッドは一口で言うと、記録と実践のたゆまぬ反復である。まず、自分は社会不安のため何ができずにいるのか、克服したら何が変わるのかを書き出す。ついで日常生活のなか、どんな状況で不安を感じたか、そのとき頭にうかんだことや肉体的反応(赤面や震えなど)を記録する。こうしてありのままの現状把握から治療は始まるのだが、さらにステップが進めば、自分がいだく不安にどのくらい根拠があるかを徹底的に自己分析し、思ったほど悲観する理由がないことを明らかにする。また、極度に失敗を恐れる人に対しては、あえて少しだけしくじりをしてみるといったプロセスも用意されている。
このように記しただけでもわかるが、著者も書いているとおり、けっして楽な方法ではない。1冊ぶんの訓練を首尾よく完了するのに、半年や1年はゆうにかかるだろう。医師も含め、理解ある協力者の存在も欠かせない。気の長い話に思えるかもしれないが、もともと安易な治療法などが通用する世界ではない。著者の姿勢はむしろ信ずるにたるものだろう。
われわれを取り巻くストレスが日ごと増大していくいま、いわばだれもが社会不安の予備軍だと言える。本書は基本的に実践治療のため書かれたものではあるが、さまざまな症例がわかりやすくまとめられているので、社会不安障害の入門書としても有効だ。自分は無関係だと決め込んで、癒しやくつろぎへ逃避するまえに、いちどあらためて心のうちを見つめてみるのも意味あることではないだろうか。(大滝浩太郎)
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