日本の禅宗の開祖のひとり、道元が中国、時の南宋に留学したのは貞応2年(1223)24歳の時。当時の代表的臨港都市明州、今の寧波(ニンポー)で禅学を学んだ。道元といえば、やはり禅の精髄を説いた大書『正法眼蔵』が有名であるが、本書に収められた「典座教訓」と「赴粥飯法」は、禅の具体的実践の方法(典座)、そして禅修行者に相応しい食生活のあり方(飯法)が説かれている。両方とも当時の大陸の生活習慣の影響を受けていて、特に食については「食と仏法の平等」が追求され、以後の時代の日本の懐石料理などの食生活にもかなりの影響力を及ぼしたものと思われる。本書は両書の書き下し文、漢文原文、現代語訳、語義説明からなり、当時の南宋の江南の口語にも配慮がなされた読みやすい訳になるべくが心掛けられている。仏教に関心を持っている方のみならず、日本料理の精神的・文化的背景を探りたい方にも参考になる文献だと評価できる。