杉山隆男氏の兵士シリーズ第4弾である。今回は陸上自衛隊に焦点を当てている。九州に近年設立された西部方面普通科連隊(西普連)の取材をメインに、北海道倶知安(くっちゃん)の第29普通科連隊廃止について、自衛隊が内包する悩みと将来について濃密なルポタージュとなっている。
西普連は、極東アジアの侵略国が九州・沖縄の離島を狙っていることに対して近年設立された部隊である。自衛隊の部隊とは、通常は番号が振られているものである(ちなみに普通科とは戦後のケンポーと左翼への対策として軍隊をイメージさせないために造られたコトバで、歩兵のことである)。ところが西普連は、自衛隊の精鋭を集め、番号を振らずに設立された部隊である。しかも通常は連隊はどこかの師団・旅団に属するものであるが、西普連の上位部隊はなく、西部方面隊の直属部隊である。これは師団が担当する区域に関係なく、九州・沖縄すべてに対応するということを意味している。
番号が無い普通科は、言葉とは裏腹に普通でない。この部隊が数年前にアメリカに渡り、米海兵隊からボートで島に上陸する訓練を受けたニュースをご記憶の方がいらっしゃるだろうか。専守防衛(=民間人に相当な犠牲が出ると思われる本土決戦を意味する。)を旨とする陸上自衛隊では、まず日本本土が攻められてから、敵を阻止したり、占領された地を奪い返したりする訓練がばかりやっていたのだ。しかし、夜間に海を渡って離島に上陸する訓練はしたことが無い。存在してあたり前の部隊や訓練が自衛隊に50年以上無かった不自然さを憂うところ大である。
その他、自衛隊のジレンマ(自らを否定するケンポーを遵守している件)や、社会のはみ出しものがいる一方で、高学歴の兵隊が増えて高卒の上官が扱いに困る現状などの悩みなども紹介している。
自衛隊員が決して戦争を望む好戦的な軍国主義者ではなく、戦後民主主義を良く実践してきた故にジレンマに陥る日本社会のまさに縮図であることが良く分かる本である。