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共通感覚論 (岩波現代文庫―学術)
 
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共通感覚論 (岩波現代文庫―学術) [文庫]

中村 雄二郎
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

〈常識〉を意味するコモン・センスという言葉は,アリストテレス以来,五感を統合する根源的能力の〈共通感覚〉を意味していた.この2つはどのように結びつき,関係するのだろうか.古今の知見を縦横に駆使し,人間や芸術に関する多くの重要な問題がコモン・センスの問題にかかわることを明らかにした現代哲学の記念碑的著作.木村敏解説.

登録情報

  • 文庫: 389ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2000/1/14)
  • ISBN-10: 4006000014
  • ISBN-13: 978-4006000011
  • 発売日: 2000/1/14
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫
「常識」という融通無碍な概念の吟味を起点として、近代的理性の偏重に抗するための総合的カテゴリーとしての「共通感覚」の可能性を探求する。身体・言語・記憶・イメージ・想像力・場所・時間など現代社会の考察において避けて通れないカテゴリーを縦断的に論じている。

目次は以下の通り

1.共通感覚の再発見
2.視覚の神話をこえて
3.共通感覚と言語
4.記憶・時間・場所

「常識」とは社会的個人が生活するにあたり、自明性をもった慣習・約束事(convention)の網であり、それが張り巡らされた「場所」である。その社会・個人にとっての危機が生じるとき、「常識」の自明性の堅固な壁が崩れ始める(「常識」とは社会の「自明性」の下に隠蔽された日常的権力/服従関係の再生産を担うイデオロギー装置でもある)。デュシャンやケージの作品さらには日常的自明性を決定的に喪失してしまった分裂症患者がこの事象を裏付ける。

「常識」の系譜を辿れば、これはアリストテレスにより論じられた共通感覚(sensus communis)に行きあたる。これは五感の全体的な統合を司る根源的能力であった。しかし、このような感覚・身体性をも包括した共通感覚は、近代合理主義の祖デカルトによって理性(raison)、常識(sens commun)の実体化・純化のため意図的に捨象されてしまった。この傾向は近代の危機を垣間見た20世紀のみならず、現代においても継続している。

この理性偏重の時代を反省するにあたって、身体・言語・イメージ・想像力・場所・記憶・時間などをキーワードにして古代から現代へ至る哲学に加え、生理学、脳科学、言語学などに渉る豊富なテクストの渉猟から論じられる。論点は極めて多様であるが、「見ること」「イメージ」「記憶」に関する議論を取り上げてみる。

まず近代において視覚の絶対的優位性が論じられる。これは幾何学、自然科学の発展、視覚的には透視遠近法の成立に現れ、空間の幾何学的構成、支配を可能にした。これは同時にフーコーの論じたような見ること/見られること=支配/服従関係のアレゴリーであり、これは言わずもがな「一望監視施設」へと結実した。

このような視覚とは分析的数学的理性でもあるが、これを改めるにあたり、見ることにおける他の感覚とりわけ触覚の回復を唱える。特殊感覚(視覚・聴覚など)は本来、体性感覚(皮膚感覚・運動感覚など)である。つまり「見ること」は「触れること」「感じること」でもある。バークリーやコンディヤックの触覚論が引き合いに出されるが、これは視覚における身体性の復権であり、共通感覚への回帰に他ならない。

「見ること」の持つ本来的身体性の回復は本著の重要な主題でもあり、また「記憶」「イメージ」「言語」がもつ原初的な感覚性・身体性の役割の再考へとつながっている。

ベルグソンは想起的記憶と習慣的記憶と分けて論じた。しかしこれは精神的記憶と身体的記憶という心身二元論の図式の延長であると批判的な再考が試みられる。このためギリシャ・ローマにおける記憶術、トポス論が参照される。

記憶術とは、ギリシア・ローマ時代における弁論術において有効に弁論を展開するための技術として考え出されたが、これは具体的には物事を「場所」「空間」と結び付けて記憶することが重視されていた。またアリストテレスは記憶・想起を論じたが、記憶とは(過去として不在の)イメージの表象=再現前化に他ならない。

他方、アリストテレスにとって想像力とは、思考と知覚とを媒介する能力であり、知覚から得たイメージを思考可能にまた知覚に手を加えることを可能にする。つまりは本質的に身体的・感性的な存在である「イメージ」なしには、そもそも理性的営為形態の最もたる思考そのものが不可能であるということである。また同時に理性そのものともいえる言語のイメージ性・身体性ということも触れられる。

このような理性に対する身体性・感覚性は近代化に従って分離・捨象の対象とされてきたが、これがポストモダンの現代において重要性を持つというのは当然でまた「常識」でもあるのかもしれない。

繰り返しになるが、共通感覚というテーマを軸としつつも扱われるテクストは古代から現代に至る西洋哲学から選ばれかつ哲学という分野に縛られない総合的アプローチをとっている。従って論点も非常に多くその示唆するところは非常に多く、これらのテーマは未だに今日性をもっており今後も読み続けられるべき作品である。評者にとってはイメージ論的な読みがしっくり感じられたが、これは本著の可能性の証左であるだろう。
このレビューは参考になりましたか?
21 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By "kjkj3"
形式:文庫
常識をもっと、感覚的な面から探ったもので、アリストテレスらの共通感覚論
を再発見した傑作であると思う。中村雄二郎の思想がもっともっと評価されてもいいころだとおもう。

近年、常識というものを捉えなおすということを認知科学などでやられているが、共通感覚論をもう一度読み直してみるとよい。70年代最後に初めて出版されて結構たっているがその新鮮さは失われない。それは恐らく「常識」という問題が今もって解決していないということだ。養老孟司の「バカの壁」でも常識というものが結局問題となっていた。

また著者の今後の思想、臨床の知や汎リズム論への発展するもとにもなっていて色んなアイディアが散りばめられているいて読み直しても飽きない。

このレビューは参考になりましたか?
14 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 白頭
形式:文庫
もう20年程まえ、80年代に著者が「魔女ランダ考」等で、一躍注目を
あびたころにはじめてよみました。
今回、文庫化を機に再読してみました。
誰もが使っていながら由緒不明な「常識」について論を起こし、
センススコムニス、共通感覚と西洋哲学史に流れるベース音を丁寧に
拾い上げ跡付けていきます。そういう意味では、ある種の西洋哲学史

としてもよめます。修辞論やトポス論など、多彩なトピックスも交え
ながら、視覚優位になってしまった認識の基底へと静かに遡行してい
く様は、さながら哲学版「ミクロの決死圏」。
西洋哲学のタームに則りながらも、まぎれもなく日本人らしい観点を
感じさせ、テーマは違えど、九鬼の「いきの構造」にも比される優れた
論考だと思います。

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