少し前「
インビジブル [DVD]」というSF映画があった。科学の力で個人が透明人間
になると、自我はどうなるか?という実験的な問いを名悪優ケビンが演じた。
これはそのままインターネットの世界にも当てはまる。
個人が匿名性を保ったまま、無制限の広大な活動の場を与えられるとどうなるか?このタイムリーな問いに村上龍が応えた作品。
村上龍は時計だな。普通の時計はデジタルな数字を伝えるメディアであり
装置だ。龍時計はアナログな物語で同胞だけに「今」を伝える。いま日本の
先っぽで何が起こってるのか。自分に迫る危機まであとどのくらいか。田舎モン
にもわかり易く伝える。ただアナログだから正確ではない、後のメンテナンスは読み手しだい。
さて問題は、自分だけ透明な存在になる事は他者の排除・社会性の欠落
を招き易いという事だ。まず相手がみえないと双方向が崩れるからだ。特に
この主人公の様に子供の場合。判断力や自制心、共感力が充分に育ってい
ない者が、無制限な電子世界にハマルと危い。ネット上ではこの主人公の様に
簡単に名前を捨て改名できる。つまり自らの履歴・責任を一方的に放棄できるわけだ。
ネット上の狂気という現代の課題を、旧来の文脈でなく、インターネット
自身の文脈で描いてみせた。村上龍あなたは欠けがえのない時計だ。
PS●この作家の高い速報性を考えれば、文庫や古本では既に効果半減だった。以後なるべく新刊で読もう。せっかく同時代に同言語圏で生まれたのだから。Web上でこの作品に出会えなかったのが悔しい。