本書は神経科医の著者が、共感覚者との偶然の出会いから研究を開始し、共感覚をきっかけに、脳のしくみや感覚認知、理性と情動の関係、ひいては医療のありかたにまで切り込んでいくさまを、ミステリー仕立てに描いた1冊である。
共感覚者は、外見的にはまったく普通で、神経医学的な検査を行っても異常は見つからない。しかも、共感覚は本人以外には確認のしようがない感覚であるため、他人から変だと思われるのを嫌がって、自らそのことを告白する人は少ない。医学的な関心を持たれることもほとんどなく、その研究と実験はゼロからのスタートだった。
著者は随所で、医療のあり方に対し、鋭い批判を繰り返している。現代医療の現場においては、患者側にも「機械にまちがいを立証されるのではないかという不安、何が正しいか何が現実かを自分自身より機械のほうが知っているという暗黙の思い込み」が浸透しているという。機械による検査に引っかからなければ、すべて患者の気のせいだと切り捨てるのではなく、主観的な体験も重視すべきだという主張には説得力がある。
「共感覚は、実際は私たちがだれでももっている正常な脳機能なのだが、その働きが意識にのぼる人が一握りしかいない」というのが著者の仮説である。日々人の脳の中で起こっている情報処理の過程を通し、人間の心の正体について思いを巡らせることのできる1冊である。(朝倉真弓)
登録情報
|
医学ものには珍しく会話の豊富な読みやすい文章。
訳もこなれていて「翻訳物らしさ」がなくてよい。
シトーウェックが、共感覚者と出会うことから、「物語」は始まる。
臨床にありながら的確な研究的視点で、ミステリーを紐解くように進む物語には、時間を忘れて引き込まれた。
一連の実験を通して明らかになった「共感覚」の原因は、予想外であるが比較的シンプル。
この本の真髄は、「私たちが日常当たり前であると感じて生活していることを、実は脳が絶妙な仕組みで調節して認識しており、その脳も実は、、、(ぜひ読んでください。)」
お勧めの一冊。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|