海暮れて鴨の声ほのかに白し
石山の石より白し秋の風
鐘消えて花の香は撞く夕べかな
芭蕉のこの三句には何かがある。が、その何かが解らない。という状態であったが「共感覚」という補助線があると腑に落ちることが分かった。そして、この本でも確かめることが出来た。
この本での「共感覚」は、五感のそれぞれが入り混じり協働する。に限定」せず、広く古今東西の文学作品等に見られる表現を取り上げている。
以下、目を引いた点を記す。
.知覚的世界において真偽はない(大森荘蔵)を受けて感覚作用は全ての感情が同時に発動することから主客同一の状態にある。その中身も言葉で表すのは至難である。言語外的事象とした方がいいのではないか。そして、それがすべての基底である。
.「記憶」と想起は分離したほうがよい。記憶とは、写真記憶(直観像=イメージ)のことで想起とは、主体がありむしろ夢に近い。
.触覚が一番欺かない。
視覚以外の感覚は、空間化したがる。それは空間が言語に近しいからであろう。
感覚は「わたし」よりも古い、いのちの無名の蠢きである。
視覚で思考する人がいるが、視覚は想像・幻想の源である。