女性に多いとされる「共感」型は、「心の理論」そのもので、前著の「自閉症とマインド・ブラインドネス」に詳しい記述があります。(参考までに)哲学者ダニエル・デネットの言う「志向姿勢」に相当すると思います。
本書では、新たに「システム化」なる概念が、男性に多いタイプとして登場します。要するに物事を因果的にとらえようとする傾向で、観察から帰納的に規則を見出そうとする傾向で、規則に従ってシステムを構築しようとする傾向のことらしいですが、どうにも意味が広すぎてつかみどころがない印象を受けました。こちらはデネットの言う「物理姿勢」と「デザイン姿勢」をあわせたものに近いようです。
議論は共感型の女性脳、システム型の男性脳、そして極端な男性型としての自閉症患者と進みますが、著者は慎重さを見せつつもこれら全てを単一属性のスペクトルとして捉えようとしているようです。そして、ここから極端な女性型の人が存在するはずだという予測へともっていきます。そのような人の候補として、自分はテレパシーが使えると思っている人々というのが挙げられています。私見ですが最近テレビに出ている動物と話せるとかいうおばさん。新手のペテン師だと思っていましたが、案外こういう類の人なのかもしれないなと思いました。もし彼女のシステム化能力が著しく低ければ、この突飛な説もそれなりに信憑性を帯びてくるかもしれないですね。以上、多少強引なところもありますが、全体としては非常に面白い本だと思います。前著の「自閉症とマインド・ブラインドネス」はやや専門的ですが、こちらもオススメです。
さて、内容の素晴らしさもさることながら、特筆すべきは訳者のレベルの高さと出版社の姿勢です。訳は日本語として完璧でかつ非常に読みやすい。そのうえ、日本人の専門家若林明雄氏による解説もついていて、参考文献リストもきっちり備えており、入門書としての体裁も整えている。これでこの価格に抑えられるとはまさに出版社の鑑だと思います。