50代半ばになって、円熟の境地に片足を踏み入れた著者が、源氏物語の語り直しに挑んだ。
現代語訳ではないので、田辺源氏とか瀬戸内源氏とかと同列に、林源氏とは言えまい。
林源氏はむしろリンボウ先生の方です。
謹訳 源氏物語 一話者を源氏物語の要所要所で登場する六条御息所に設定した。これが成功している。
(話者を登場人物の一人に設定しての語り直しは、他の作家も何人か挑戦しています)
死後も成仏できずにいる女(御息所)が、時空を自在に往来して、源氏の生涯を語りなおす。
高貴で知的な女の、同性に向けるちょっと意地悪な視線や、源氏への批判的な眼差しは、
現代女性の共感を誘いやすい。
「ね、そうでしょ?」「うん、うん、そうだよね」という読者との共感なしには、林文学は成立しないのだ。私は読み始めて「なんだか高級女性誌を読んでるみたい」という感想を抱いたが、実際その手の類の雑誌に連載されていたらしい。
こんなこと、原文ないしは現代語訳を読みながら、読者が各自で想像を膨らませれたらいいじゃない、それが読書の楽しみじゃない、といった気分にならなくもないのだけれど、林氏はしっかり勉強なさって書いておられるし、何より筆が達者だから、楽しく読み進むことができます。2巻目が出たら、私はきっと読むでしょう。売れっ子の実力だよね。
なんだか褒めてんだかけなしてるんだか、自分でもわからなくなってきた。
ともあれ、才ある女性の挑戦には、感服いたします。
田辺聖子氏は、光源氏に心底ほれ込んでいらっしゃる。瀬戸内寂聴氏はちょっと辛辣な視線で源氏を眺め、いつだって女たちの味方。一番愛されたはずの紫の上を、一番可哀想よね、と仰る。
林真理子氏は、登場人物の誰に一番シンパシーを感じ、誰を最もいとおしく感じていらっしゃるのだろう。
1巻目では、まだよく伝わってはきません。