法哲学者・井上達夫教授はリベラリズムの本質を正義基底性に求めて「公正」概念を「正義」概念に還元する「正義として公正」論を採用する。ロナルド・ドゥオーキンは手続的正義としての「公正」と実体的正義としての「正義」について,それぞれの概念の独自性を認めて「公正としての正義」論も「正義としての公正」論も排斥する。
これに対して,ジョン・ロールズは実体的正義としての「正義」と純粋な手続的正義としての「公正」の概念を明確に区分した上で,「公正としての正義」として規範的な正義論を構築している。本書『公正としての正義 再説』は,この「公正としての正義」の比較的重大な欠陥を直すことを主要な目的としている。後期ロールズの法哲学の到達点が,本書にある。
本書でロールズが行う理論的変更点は大まかに言って三つある。1.正義の二原理の内容・定式面での変更 2.原初状態から正義の二原理を導き出す過程の変更 3.「公正としての正義」を包括的な道徳的教説の一部ではなく,政治的構想として理解する点での変更。
とりわけ三点目の変更は重大な議論を巻き起こしている。ロールズは自らの正義論に対する批判に応答するために,自らの正義の二原理を政治的構想のレベルにまで撤退・縮小させたが,前期ロールズの考えを維持すべきであったとの見解も強い。
『公正としての正義』『公正としての正義 再説』を両方読んで,両者の見解を比較・検討すると面白いだろう。