自身の経験をもとに公安警察のあり方を問うた作品。平易な文章で書かれているので解りやすく読み易い。ただ、あとがきにその理由が書かれているが、公安を巡る裏話的なエピソードは書かれていない。書かれているのは、あくまで公安の「手口」である。そういう意味では著者の経歴通りの硬派な一冊だ。
客観的であろうとしているのが文章から滲み出てくるが、時折り、公安憎しという感情が表出している文章が見受けられる。ただ、それも裏を返せば彼が受けた取り締まりが理不尽だったという証拠なのだろう。
テロに対する監視にシフトしてきているとはいえ、いまだに共産党に対する取締り(監視)が公安警察の仕事のかなりの部分を占めていることにまず驚いた。過去は過去として現在は合法政党にもかかわらず、党勢がジリ貧であるにもかかわらずだ。著者が指摘するとおり組織の維持のためと捉えられても仕方ない。
著者は、公安警察官の一人一人は優秀で、強烈な「愛国心」を持った人々であり、並みの覚悟でできる仕事ではないと記している。そして、その手口について内部告発が起きない公安の「教育体系」に驚愕し、それを「思想教育」と定義している。たしかに、思想を取り締まる側が行なう教育は思想教育しかないのかもしれない。
また、著者は、公安は日本で最も「愛国者」なのかもしれない。そうした優秀な人材をいつまでも顔のない隠密にしておくのはもったいない。さらには、抑圧・謀略機関の一員として終わらせるのも惜しいと思う。と記し、公安について開かれた議論すべきではないだろうかと主張する。もっともな意見だが、それは無理だろうな・・・。