2011年は敗戦後「66年」と決別する初めの年である。公務員においてもそうだ。
しかし公務員は、すでに2009年9月にそれ以前と決別するほかない状況に出会った。民主党が政権を自民党から奪ったからである。その折に菅直人氏は、それを「官僚主権国家」から「国民主権国家」への転換だと表現した(『大臣 増補版』岩波新書)。現実にそれから二年過ぎて、転換が実現したとは思われない。それは、それほどに官僚世界が強靭なのか、民主党政権が弱体なのかはひとまず置くが。
公務員世界の変革は、前段があった。中央にあっては省庁の統廃合再編、地方にあっては地方分権改革、市町村合併が90年代から2000年代にかけてあり、戦後長く続いた官僚組織の制度、風土が変革を迫られた。しかし、公務員の意識改革は根本的には起きなかったと言っていいだろう。制度も風土もたやすく変わらないからである。そうしている内に政権交代が起き、官僚世界はまるで無能組織のような扱いを受けることとなった。それにつれ、公務員が酒気帯び運転や未成年買春をしたり、市民への対応が悪かったりすれば、マスコミから従前にはなかったほどの手ひどいバッシングを受けるようになった。
そうした状況の中で、地域発展の主役になる地方公務員もいて時代の寵児となる人も出た。公務員世界は注目を浴び、幅が広くなっていたのである。東日本大震災で身を挺して注目を浴びた公務員も多くいて、社会に必要な存在と認められるようにもなった。
著者は、そうした例を踏まえつつ、しかし地道に働く地方公務員の勤労がもっと高まることがこれからの社会に必要だという視点で本書を著した。「承認理論」ですでに広く認められていた著者が、経営学の範疇で手薄であった公務員分野に手を伸ばして調査研究執筆をしての書である。
第一章から第三章まで、これまでの研究成果を活用して公務員分野の問題点を洗い直し、公務員のやる気をいかに高めるかの道筋を示した。「超やる気」は、「自分が仕事の主役である」と自覚することで起きる。その「三要素」は、「自律、承認、夢」であるとし、第四章においてその具体的な事例を示しながら説得力のある提案を書いている。著者は、第四章を「本書のクライマックス」と書いている。迫力がある章だ。
第四章で注目すべきは、公務員の世界にあって外部資源の活用と、副業の自律的な実践、比較的若い頃での公務員から民間への転身のすすめなどである。できる公務員はスピンアウトしがちだと例を挙げて説いている。
評者は都内の江戸川区に居住しているけれども、江戸川区でいちばん大きい組織は区役所である。地方に行けば類例は多いだろう。日本人勤労者の一割が公務員関係であるからには、これからの超高齢社会、成長資本主義に拠らない生活重視の社会を確立して運営していくには、公務員たちの意識改革が鍵を握る。ことに介護・医療部門においていかに公務員が状況を好転させるかが重要である。そうした社会改革のために本書は大きく貢献するだろう。
若い公務員志望者には、面接準備には欠かせない本だと勧めておく。