100年に一度の未曾有の不況と言われている今日、公務員を志望する学生や役所に転職したいというお方が少なくないようである。
けれど、公務員試験の問題集を買ったり、公務員予備校に入校したものの公務員の実態を理解している者は少ないように思われる。これは、書店に行っても公務員の真の姿を紹介している書籍が限られており(公務員賞賛本、バッシング本は多数あるが)、予備校の多くは運営上の理由から、役所や公務員のネガティブな側面には触れないようにしているからだ。
そういう中で、この本は役所や公務員の実態を人事や給与、福利厚生の面に至るまで幅広く触れられており、今まで知られていなかった「お役所」の姿が如実に描かれている。
言うまでもなく「公務員は安定な職場ではない」点にも触れられており、一生公務員で安泰だと思っていたら、いつの間にか民営化されていたり、独立行政法人化になっていた、というケースも少なくないそうだ。
私事で恐縮だが、当方の弟もかつて公務員試験を受験し、研究施設に勤務する公務員になったものの、自治体の財政危機による人員削減で、近い将来地方独立法人の職員(非公務員)になるという。弟はかつて自治体の人事委員会が作成したパンフレットに掲載され「仕事が充実しています」なんて紹介されていたのだが、まさか数年後には公務員でなくなるということを、私も当の本人も予測していなかったのである。
公務員の仕事もいろいろで、確かに楽で定時には帰ることができる部署もある。けれど、その一方で1ヶ月の残業時間が100時間を超えるところもある。超過勤務手当も満額支給される部署もあれば、予算が限られサービス残業を強いられている部署もある。しかし、こうした実態があまりマスメディアには登場しないのはどうしてだろうか。
今、公務員の間では精神疾患(主にうつ病)が激増しているという。業務量の増大、世間の監視の目が厳しくなったこと、広域人事と称して業務に全く素人の上司と職員が配属され、パワハラ等の人間関係に起因する問題が増えたことが原因である。また、民間ほどではないが、公務員になって数年で辞めていく職員も増加しているという。
著者はかつて霞ヶ関のキャリア組だっただけに、公務員や役所の裏側を良く知っている。できれば地方公務員の実態(都道府県、市区町村)についてもっと踏み込んで欲しかったが、次作に期待したい。
この本を読まずして公務員になるならば、きっと後悔するであろうと感じさせられる一冊だ。「公務員は楽で安定している」という言葉は21世紀の今、幻想にしか過ぎないのである。