ここ数年、先進的な地方公共団体では、制度上の現金主義会計だけでなく発生主義会計による財務諸表の作成が試みられています。関心のあるテーマだったので、本書以前にも公会計に関する文献は何冊か読みましたが、理論の整合性に納得できない部分(税収を「収益」と見做す考え方)が多々残っていました。
私は、情報システムのコンサルティング、設計・開発に関する仕事を通じて、これまで、複式簿記、ERPといった企業会計の世界と、官公庁の現金主義会計の世界を両方見てきました。そのため、企業会計の考え方をそのまま公会計にあてはめることの難しさは理解できました。
本書は、まさにこれまで感じてきた疑問に回答してくれるものでした。新書版ですが、内容は多岐にわたり、非常に密度の濃い一冊です。
会計主体である官公庁が、誰に対して情報開示義務(アカウンタビリティ)を負うかという法的視点から説き起こし、まず、税収を「収益」ではなく納税者持分である「資本」と位置づけ、次に、企業会計にはない「処分・蓄積勘定」を加えた公会計独自の勘定連絡を組立てることで、納得のいく論理整合性となっています。
更に、著者の仕事について、2点特記しておきます。1つ目は、机上の論理に留まらない実践的な姿勢です。数千本におよぶ公会計独自の仕訳パターンを作成し、これを「エンジン」とする情報システム「国ナビ」を開発したことです。同じ仕事に携わる者として、この成果の今後の展開が楽しみです。そして2つ目は、世代間における受益と負担の関係を健全化し、現役世代の「つけ」を子供たちの時代に先送りしないために、どのような仕組が必要かという真摯な問いかけです。
著者の今後の仕事に注目していきたい。