70年代の日本映画の代表作の一つである名画『八甲田山』のサントラ盤が初CD化。今までCD化されていなかったという事に少々驚かされるが、こうして今回CD化され日の目を観たのは嬉しい限りである。
音楽は映画で使用された順に配置されているので映画のイメージを追いやすく、『八甲田山』の世界に入り込みやすい。
作曲者の芥川也寸志は、この『八甲田山』のサウンドトラックで単なる映画のBGMではない『音楽による八甲田山の世界』を見事に作り上げている。
当時の日本映画は、まだ音楽を効果音的に使う手法を取っていた為、抽象的な音楽を劇中に使用することが多かった。その為、映画を観ている者の心に、使用された音楽の印象が残ることは少なかった。そんな日本映画の音楽に芥川也寸志は洋画音楽の手法を取り入れ、それぞれテーマ毎に旋律を作り上げ、それらをアレンジしたものを場面毎に配置していく事で、効果音としての音楽ではない、映画と同化した一つの『音楽作品』を、この『八甲田山』の音楽で作ることに成功している。
メインテーマを始めとする数々のそれら叙情的な旋律は、映画に写し出される八甲田の大自然の情景と見事にマッチし、時には美しく、時には恐ろしく、時には悲しく、観ている者の心に強く印象づけられていく。
だから、このサントラ盤で芥川也寸志の作り上げた音楽に触れるだけで、映画『八甲田山』の様々な情景や感動が音楽にあわせて次々と蘇り心に迫ってくる。
ただ、残念なことにレコード盤からのCD化の為、かなりの数の劇中使用曲が収録されていないのが惜しい。
できればボーナストラックに歌を入れるのではなく、CD収録時間フルに音楽を入れたサントラ盤を出して欲しかったが、音源の編集やマスタリングなど様々な問題があって新しく曲を追加するのは無理なのだろう。
またボーナストラックの歌も、映画の世界観とはあまりそぐわない内容で、個人的には収録しなくても良かったのではと思う。
マイナス要素もあるが、このサントラ盤がCDで再発されたお陰で、その音楽世界に触れ、堪能する事で映画『八甲田山』の奥深さを更に知ることが出来た事を思うと、★5つの価値は十分にあると思う。