主人公は、脚本家を目指しながら、自販機の飲料水の交換のアルバイトで生活をしている敦です。彼は、明日離婚届を提出しようとしています。彼の仕事のパートナーは水城という女性で、彼女は離婚して女手一つで子供を育てています。
物語は、こんな二人がトラックの中で交わす敦の離婚問題です。そこには、男女の心のすれ違いが、何気ない言葉ですが、深みのある心情を良く表していると思います。脅迫神経症のような妻の知恵子に苛立ち、自分の本心を告げられずに溝を深めてしまう部分なども、さらっと書いているのですが、敦の気持ちが伝わってくるようです。さらっとした一つ一つの言葉の裏に教訓的なものを感じてしまいます。
そうした上手さを感じる文章で非常に読みやすいのですが、ただ、「芥川賞」と言われると、何となく物足りなさを感じてしまうのは私だけでしょうか。
どうしても「芥川賞」と言うと、「前衛的」で「先見性」のある作品を期待してしまいます。その意味では残念な気がしますが、逆に言えば、誰でもが読みやすい作品であるということでしょう。