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八月の砲声 下 (ちくま学芸文庫)
 
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八月の砲声 下 (ちくま学芸文庫) [文庫]

バーバラ・W・タックマン , 山室 まりや
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

1914年6月28日、サライェヴォに響いた一発の銃声がヨーロッパに戦火を呼びこんだ。網の目のような条約で相互に結ばれた各国指導者たちは、開戦準備に奔走する一方で戦争回避の道を探るが、戦火は瞬く間に拡大する。情報の混乱、指導者たちの誤算と過信。予測不能の情況のなかで、軍の用意していた戦術だけが既定方針として着々と実行され、世界は戦争の泥沼に沈んでいった。―第一次世界大戦の勃発に際し、政治と外交と軍事で何がどう決定され、あるいは決定されなかったかを克明に描いてピュリッツァー賞に輝いた、戦争ノンフィクションの傑作。下巻は戦局の転回点となったマルヌ会戦の後まで。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

タックマン,バーバラ・W.
1912‐89年。ニューヨークの名門に生まれ、ハーヴァード大学を卒業。政治評論誌「ザ・ネーション」の論説や特集記事を担当し37年には記者としてスペイン内乱を取材、英国評論誌特派員ののち、文筆家として活躍。63年に『八月の砲声』でピュリッツァー賞を受賞、72年には『失敗したアメリカの中国政策』で再受賞した

山室 まりや
1915‐94年。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 452ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (2004/7/8)
  • ISBN-10: 4480088687
  • ISBN-13: 978-4480088680
  • 発売日: 2004/7/8
  • 商品の寸法: 14.6 x 10.6 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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16 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
上巻に引き続き,第1次世界大戦の最初の2ヶ月間にわたる戦闘と,各国の上層部におけるさまざまな動きが詳細に述べられている。

非常に膨大な資料(日本語版では参考文献は掲載されていないが,原書では50ページにわたり参考文献と注が記されているようである)に基づいて分析がなされ,できうる限りの独断を排除して戦争の経緯が述べられている。本文中に出てくる人物のセリフや私的感情の描写は想像によるものではなく,すべて手記,記録文書,インタヴューなどの一次資料によって裏づけられているものである。

基本的には,史実にのっとって戦争の実態を政治家,軍人,兵士,一般市民それぞれの立場から多面的に解き明かしていくという方法をとっている。その内容は,なかなかエキサイティングで,戦争に携わった人々の焦り,政治家と軍人との対立,軍人同士の対立などがよく描かれていると思う。

そして本書の最後に,この2ヶ月間の戦闘の大詰めとなるマルヌの会戦の歴史的意義が短いながらも端的に記されている。つまり,この2ヶ月の間の戦いが,その後の歴史にどのような影響を与えたのかが,歴史家バーバラ・タックマンの視点から説き明かされるのである。

この本は,単なる戦争の一場面を記したものではなく,その一場面を描くことによって戦争そのものの歴史的本質を語っているものと考えられるだろう。一読の価値は十分にあると思う。

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8 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
ドイツは果たして親日国なのか?んなわけ、ねーだろ(笑  日本には、いまだにドイツのことを「かつての同盟国」などと勝手に定義する奴がいる。しかし、本書を読むと、ドイツ人が日本をどのような目で眺めていたか、よく解ろうというものである。

ドイツ人の発想の中核には「アーリア人絶対優越思想」というのがあって、要するに北ドイツの森の中で育まれているうちに世界で最も優秀で勤勉なチュートン民族が生まれ、それがドイツ人として今に残り、世界を支配しているかに見えるアングロサクソンも実はチュートン人の派生系であって、だからアングロサクソンとドイツ人は世界を分割統治する運命にあって、劣等なるラテン系(フランス、イタリア、その他もろもろ)やスラブ系は、すべてドイツの支配下に入るのが神の意志に沿うということになる。フランス人でさえ劣等なんだから、トルコ人、アラブ人、黒人はもちろん、日本を含むアジア人は全部劣等ということになる。それがドイツ人の基本的な発想だ。だからドイツ人の日本を見る目は基本的に冷たい。ドイツは英米への対抗上ドイツを頼ろう、頼らざるをえないという消去法的ドイツ好きというのは旧陸軍の昔から結構いるが、ドイツ人は基本的に日本人を侮蔑し敵視している。そもそもイギリスと組んでドイツの中国侵略を邪魔したのは他ならぬ日本だ。それだけではない。第一次大戦後、ドイツが辛うじて確保したドイツの中国植民地を奪ったのもドイツだ。だから支那事変の最中、日本に同盟を持ちかけながら、その一方で、ドイツは最後の瞬間まで蒋介石に大規模な軍事援助をし、将校団を送り込んでは中国軍に訓練を施し続けた。上海事変で日本軍に大損害を与えたのはドイツ軍に指導されドイツ製の武器で武装した蒋介石の精鋭たちである。

そんなドイツ人だが、一方で、日本にそこはかとない希望を抱いていたのも事実のようで、欧州で孤立し、腹背に敵を受けて焦燥感を募らせるドイツ人が抱いた希望は、日露戦争の総仕上げをすべく日本がロシアに宣戦布告し、ロシアが大規模な戦力をシベリアに振り向けざるを得なくなって、ドイツの東側からの脅威は減ることであったそうな。開戦の直前、孤立と焦燥を募らせるドイツの首都ベルリンで、時ならぬ「日本バンザイ」の声が巻き起こり、ベルリン市民が日本大使館前に殺到するシーンが本書に出てくる。「日本、ロシアに宣戦布告す」というデマがベルリン市民の間で広まった結果の椿事である。当時の在ベルリン日本大使館員たちは、さぞ驚いたことだろう。

本書を読むと、当時のロシアも退廃と混乱の極みにあって、言わば滅びるべくして滅んだという思いを強くする。何よりいけないのは、権力の中枢にいた絶対君主ニコライ二世が、本当のバカだったという事実だ。父君のアレクサンドル三世には息子ニコライに対する強い教育方針があって、「息子に対し政治だの帝王学だの教えるのは分別がつく30歳を過ぎてからでよい。それまではせいぜい遊んでおくことだ」と息子のニコライに全く政治教育らしい教育をせずほったらかしにしていたという。お蔭でニコライはテニス他のスポーツや享楽しかしらないバカ息子として大きくなった。アレクサンドル三世の最大の失策は、自身の寿命を読み間違えたことで、息子が30歳を超えたらしっかりと後継者として育てるつもりだったのだろうが、息子が26歳のとき、この世を去ってしまう。カワイソウなのはニコライで、お蔭で政治のこともロシア帝国のことも何も知らない、何も知らないが故にすべてにおいて自信のないひ弱な若造のまま皇帝に就任してしまう。そういう君主を頂くロシア帝国の軍部がどういう状況になるかは、大体察しが付こうというものだが、要するにおべんちゃらをいうだけが得意な無能な将軍ほど出世し、正論を吐く有能な将軍ほど左遷させるという状態。これでドイツに勝てるわけがない。何よりロシアが悲惨だったのは通信インフラ、道路インフラの欠如で、これでロシア参謀本部は最後の最後まで自分の軍隊がどこにいて敵がどこにいるか分からない。通信インフラが悲惨なので、ごうを煮やしたロシアの前線司令官は暗号ではなく平文で交信をはじめるが、これがドイツ軍に筒抜けてロシアの司令部よりドイツの司令部のほうがロシア軍の配置を正確に把握することになって、それが最終的にタンネンベルグにおける殲滅戦へと帰結していく。

ドイツが英国を敵に回した最終的な要因は、ドイツが20世紀初頭に行った大海軍の建設(いわゆる英独建艦競争)である。大陸軍国家ドイツは、大海軍は持たないのを旨としてきたが、アルフレット・セイヤー・マハンの『海上権力史論』を読んでいたく感動したカイザーが、それがどういう政治的外交的インパクトを与えるかも考えずに、「ドイッチェラントユーバーアレスするためには大海軍を持たなくてはならない」と言い出したことで始まった。しかし大海軍とは、もともと海上交易の安全を守るために海洋国家がその必要から持つようになった国際社会の公共財なのであって、ろくな海外植民地を持たないドイツが、どうして英国並みの大海軍を持たなければならないのか、その理由は当初から不明だった。それでも海軍大臣の座についたティルピッツは、「これだけ英国を刺激して、それでもドイツが大海軍を建設するということは、きっとその先に、ドイツが大海軍を使ってどのようにして世界の海上覇権を英国から奪取し、それを維持発展させるかについての大戦略があるのだろう」と思っていた。しかし海軍参謀本部はその作戦計画を極秘扱いし、海軍大臣といえども作戦計画は教えられないものとされてきた。しかし国家間の緊張が極限まで高まり、いよいよ明日英国に向けて宣戦布告というその時になると、ついに海軍大臣ティルピッツは参謀総長から作戦計画の全貌を教えてもらうことになった。満を持し、待ち構えるティルピッツに対し、参謀総長は厳かに告げた。「ドイツ海軍に作戦計画はありません」。

ドイツが行った最悪の選択は、過剰とも言えるクラウゼヴィッツ信仰によってもたらされた。クラウゼヴィッツは戦争を悲惨なものにしないためには短期決戦に持ち込むことが重要で、その為には相手に恐怖心を植え付け抗戦意欲を殺ぐことが何よりも重要と述べた。これを真に受けたドイツ人はフランス人やベルギー人に恐怖を植え付けようとゲリラを出した村の住民を組織的に殺戮し、村を焼き払い、歴史ある教会や大学図書館を「見せしめ」として徹底破壊する行為に出た。しかしドイツの思惑とは裏腹に、これは連合国側の抗戦意欲を高め、ホーエンツオレルン家を断絶させ、ドイツ人に戦争の惨禍の犠牲をすべて賠償させるまで戦争は継続されねばならないと決意させる。ドイツは人類の敵であり文明の敵であって、もはやドイツとの間で妥協はないと世界の人々は強く思い込むにいたる。これが過酷なまでのヴェルサイユ講和条約として結実し、ドイツ経済を破滅させ、ヒトラーの台頭を招来するわけだ。

ヨーロッパの人間って、愚かだなあ。ヨーロッパの人間って、悲しいなあ。今もフランスやベルギーの墓地には「1914年、ドイツ人による殺害される」と記した墓碑が大量に存在するという。
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