長崎の被爆をテーマにし、死者への祈り、孫たちが長崎の被爆の経験を自発的に受けとめようとする姿勢、そしてハワイから駆けつけた(リチャード・ギア演じる日系人という設定の)親戚とおばあちゃんとの間での謝罪と許しの月夜の場面が印象的な映画。米国人が原爆のことを謝罪する映画を私は寡聞にして他に知らない。ダライ・ラマを信奉する等、東洋への理解が深いギアだからこそ実現した映画と言えるだろう。日本語のセリフをしっかりこなすプロ意識の高さはさすがだ。監督の長年の反核と鎮魂の(原作にはない)想いが込められた小編だが、監督がこの手の作品を残しておきたいからと簡単に作った映画ではない。おじいちゃんが死んだ校庭にあるモニュメントをわざわざ作ってしまったのには驚く。滝つぼの水の色の鮮やかさを強調するために水面下にライトを設置したり、少ししか画面に映らないのに、森の中の落雷を受けた木の根元に造花を敷詰めて緑と赤の対比を際立たせたり、薔薇の花へと続く蟻の行列を辛抱強く撮ったり、といった具合に、黒澤監督の映像美を追求する姿勢に衰えはない。室内の撮影が多いが、おばあちゃん同士が無言で向き合うカット等、素晴らしいカットが多く、室内での黒澤式構図の設定、撮影、編集の真髄が詰まった作品だ。そして、ラストの暴風雨の中を彷徨うおばあちゃんと孫たちが走って追いつこうとするラストに「野ばら」をかぶせるセンスの冴え。見事すぎます。そういった舞台裏を丹念に説明して黒澤監督の映画作りの秘密を解き明かしてくれる野上照代さん等のオーディオ・コメンタリーは是非聞き逃さないようにして下さい。