日本論はいろいろ読んできましたが、黒川さんの本がベストでしょうか。
松岡正剛さんの仕事などと比較しても、本質をよく掴んでいます。
建築家であり、海外でも仕事をなさってきた経歴が、
役に立っているのではないかと思います。
その昔、ヨーロッパ各地に小国が林立し、国同士の争いが激しかったころ、
国を守るために周囲に壁をめぐらせて、市民はその中で暮らしました。
(略)
敵から守るために生まれたヨーロッパの都市の構造は日本には存在しません。
日本では西洋で見られるような都市間の抗争はなく、戦うのは基本的に武士だけで、
農民が戦いに巻き込まれるようになるのは、15世紀以降のことです。
こうした文章に黒川さんの本領が発揮されています。
まずは街の構造、歴史性、民家の建て方から、人と人、人と神との関係を考察し、
日本美へと論を進めてゆきます。
日本で暮らしていれば、なんとなく気づいていることですけれど、
そのなんとなくを、どこまで精緻な理論として一般化できるか。
わかりやすい言葉で、コンパクトに集約した手腕は、さすがは建築家、
シンプルかつ機能的、余計な文章がありません。
書斎ではなく、もの作りの現場から生まれた理論です。